『ショパン 天才の秘話/20歳の孤独な作曲家とロマン派の巨人たち』 中川右介
2010年 11月 25日
例えばショパンについて書かれた本と言うのは沢山ありますが、彼と同時代の作曲家たちとの交友関係をメインに据えた本というのは少ないんじゃないかと思います。
それも触れていたとしても、あくまでもショパンがメイン。
この本はちょっと違います。
ショパンの名前がタイトルにありますが、あくまで主要な登場人物の中の筆頭格、というような扱いで、他の作曲家たちの動静も細かく述べられています。
ベルリオーズ、シューマン、メンデルスゾーン、リストといった、現代にまで名を残す錚々たる顔触れが、同じ頃に接点を持っていたのです。そんな彼らの群像劇として、本書は構成されています。
ベートーヴェンやモーツァルト、シューベルトにヴェーバー、パガニーニ、そしてハイドンといった彼らの一世代、二世代近く上の作曲家たちも物語に色を添え、更にはゲーテやデュマといった文豪も登場します。
あたかも大河ドラマを見ているかのような豪華なキャストで、これは”奇跡”と呼んでも差し支えないかも知れません。
最後は早すぎるショパンの死ではなく、ジョルジュ・サンドとの出会いで幕。
この後も彼らには様々なドラマが待ち受けているのですが、その萌芽を持って幕を下ろすのも余韻を感じさせる終わり方です。