『四十七人目の浪士』 池宮彰一郎
2010年 12月 01日
後に最終編のタイトルを採り、『最後の忠臣蔵』と改題され、版を改めて出版された。
「仕舞始」はただ一人生き残ってしまった吉右衛門の、苦悩と再生を描く物語。『四十七人の刺客』にも登場した鎌倉で茶屋を営む「きよ」が、少ないながらも重要な役回りで再登場してくる。
「飛蛾の火」は同志の遺族に会って事の次第を報告に回る中で、かつての友や憎からず想っていた女性と再会した吉右衛門が、彼らの為に侍の義を立てる、という一篇。
「命なりけり」は流罪となった同志の遺族たちの赦免のため、公儀に自首する吉右衛門。柳沢吉保と次期将軍・家宣との確執を利用し、幕閣に揺さぶりをかけようというのだが・・・。
多くの登場人物が虚々実々の駆け引きを繰り広げる陰謀劇だが、その中にあって一途な吉右衛門の清々しさが胸を打つ。
そして「最後の忠臣蔵」では、討ち入り前夜に突如脱盟した無二の友垣である瀬尾孫佐衛門と再会した吉右衛門が、内蔵助の心情と友の本心を知るという感動篇。
『四十七人の刺客』も充分に面白い小説だったが、こちらを併せて読むことで更に個々の人物たちが浮き彫りになって行く。これは一対のもの、として捉えるのが良さそうだ。