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『COLD SLEEP』(2011)

昨年10月に新国立劇場で行われたヴァイオリニスト川井郁子と、ロシアバレエ界を代表するファルフ・ルジマトフが共演したステージを、12台のハイビジョンカメラを駆使して収めた”劇場版”とのことです。

『COLD SLEEP』(2011)_e0033570_200368.jpg
大洪水が起こったのか、最終戦争がおきたのか、地球は一度死滅した。
だが、「女」は種の保存のために、その直前に「コールドスリープ」に入っていた。再び人間がやり直せる時代をひたすら待っていた。
それから幾年月。
ある日、コールドスリープから目覚めた「女」の前に一人の屈強な「男」が立っていた。
自分の子供かもしれない「男」だ。
しかし、男の圧倒的な魅力に女はときめき、やがて激しい恋に落ちていく。
ところが天の怒りにふれたのか、激しい雷に打たれて男は死んでしまう。
男を失った悲しみを胸に、女は、再び眠りにつく。

膨大な時間が経過した。
再び地上に現れた「男」は、混沌のその世界で支配者として君臨していた。
女が産み落とした子供だ。
地上にある全てを手中にせんとする我が子と対峙する女は、深い悲しみを胸に、心を尽くして諌めるが、母とも知らず挑みかかる男。
女は鬼神となって、激しく男と争う。

ついには、神(宇宙の真理)が女に味方し、雷で打ち倒し、豪雨を降らせ、大洪水を巻き起こす。神の怒りに触れた支配者は、葛藤の末に自ら滅びることを選ぶ。
哀しみにくれる女は、失望を胸に再び眠りについた。
いつの日か、平和な世がくることを願いながら、再びの目覚めの日まで、時空を超えた長い眠り「COLD SLEEP」に…。


――というストーリーだということは、見終わった後に公式サイトを覗いてやっとわかったのだけれども、実際お話はあってないようなもの。
ひたすら音楽と踊りを堪能するステージです。
使われている音楽は、オリジナルも含めて全て彼女自身の演奏によってCD化されているもの。
なので殆どに聴き覚えがあった上に、上映時間も1時間半弱なので気楽に観ていました。
なんといっても川井郁子が綺麗で、しかも色っぽい。
流石に大画面でドアップはどうなのかと思いましたが、それでも全篇見惚れてました。

しかしこれは何というジャンルに分類すれば良いのでしょう?
最後にアンコールがありますが、純粋なコンサートではありません。
川井郁子自身もちょっとしたお芝居のようなものを披露します。
そもそも鈴を沢山付けた弓を使って、ヴァイオリンの良い音色が出せるものでしょうかね。

かといってバレエ、創作ダンスと言い切るには、ダンサーの出番が少なく、踊りもメインではありません。
そして先に述べたように、お話を見せるお芝居でもありません。
全く新しいパフォーマンスと言っても良いのかも知れませんが、では後に続く作品が作られるかというと…それも難しいでしょうね。
和太鼓とのコラボも目新しいところです。

ステージの構成・舞台演出は鈴木勝秀、映画版の監督は河東茂。
実はこのステージ、ちょっと見に行こうかなと考えていた時期もあったのですが、結果としてはこの映画版で正解だったかも知れません。
生ならではの良さは当然ありますが、ダンスパフォーマンスの善し悪しは一向に解しないもので、実際に観に行っていたら、おそらく退屈したのではないかと思います。
その点この映画版ではカメラがずっと川井郁子の表情を追っていきますので、それだけで十分かな。

by odin2099 | 2011-03-10 20:00 |  映画感想<カ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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