『ガメラ3/邪神<イリス>覚醒』(1999)
2011年 03月 31日
平成ガメラ三部作の完結編。

もう少し早く作られていたらシリーズにもっと勢いが出ていたかも知れないが、当初より完結編として位置付けられていたとはいうものの、本作を持って正式にシリーズは打ち止めとなってしまった。
さて、本作で一番驚かされるのが、実質的なヒロインである綾奈がガメラを憎んでいるという設定。
その彼女と一体化することで更なる力を得ようとするイリスは、設定上ではギャオスの変異体として扱われているが、そのデザインや能力にギャオスに似る部分は殆どないという新怪獣。
綾奈を演じた前田愛がどこまで意識して演じていたかはわからないが、監督は意図的に、狙って演出しているのは明白である。
1作目でもルーン文字がどうこう、アトランティス大陸が云々といっている傍から勾玉が重要なアイテムとして登場したりと”和”のテイストを伴ってはいたが、今回は舞台が奈良や京都というだけでなく、ガメラを玄武、イリスを朱雀に准えたり、”現代の巫女”朝倉美都というキャラクターを登場させたりと、怪獣映画というよりも伝奇物の側面を強く押し出し独自性を強調はしたのだが、その反面、前2作のSF映画や戦争映画の要素を気に入っていた層からは、多少なりとも拒絶反応が起こってしまったようである。
上手く活用すれば、『新世紀エヴァンゲリオン』のようなムーヴメントを巻き起こすことも可能だったのではないかと睨んでいるのだが惜しいところである。
結局のところ、メイン格の登場人物が多すぎたところに問題があったのではないだろうか。
実質的なヒロインの綾奈、キーパーソンとして設定されていたはずの朝倉美都、公式な主人公として物語を引っ張って行く長峰真弓、シリーズの顔・浅黄、美都のブレーンである倉田真也、そして今一人のシリーズの顔・大迫力、更に本来ならばヒーロー的役割を担うはずだった守部龍成、という具合にそれぞれ主人公たり得るキャラクターがこれだけいる。
映像表現含めてクオリティは高く、スタッフやキャストの熱意は伝わってくるのだが、それが負の揺らぎとして表出してしまっているのが残念でならない。
しかしながら、この三部作が20世紀の怪獣映画の掉尾を飾る意欲作、大胆な野心作であることは疑いようがない。
この作品の延長線上に、『ウルトラマンティガ』、『ウルトラマンダイナ』、『ウルトラマンガイア』といった平成<ウルトラシリーズ>の傑作群が作られ、それを意識した『仮面ライダークウガ』、『仮面ライダーアギト』といった新たな<仮面ライダー>の流れも生まれ、更に「ゴジラ」も、多分にこの”気分”を意識した<ミレニアムシリーズ>を開始することになる。
もう、平成ガメラ三部作がなかった頃には戻れないのだ。
その上でこの平成ガメラ三部作を、”傑作”と呼ぶことに異論はない。
『ガメラ/大怪獣空中決戦』
『ガメラ2/レギオン襲来』

「ガメラ3 邪神覚醒」も観ました。 その前に4年前の記事見たら「心をひきつけられはしなかった」と自分で書いてやがりました。まぁ正月にだるだるっと観た時でしたからね・・・数年経てば印象も変わります(汗。 さてガメラ3。前回レギオンを倒す際に地球のマナを消費...... more

本日二本目の更新です。一本目「4月のケズメ情報 」はこちら。 本項では、「大怪獣空中戦」から「邪神襲来」まで平成(金子版)ガメラ三部作鑑賞記事などを、まとめてご紹介しております。 前回更新分の、「金子版視聴記 /03/28 」にはこちらから。 G?論議: 『 【徒然なる...... more

監督 金子修介 主演 中山忍 1999年 日本映画 108分 特撮 採点★★★ 妖怪ってのが自然や自然現象を具象化した存在であるのと同様に、怪獣ってのはやっぱり空襲や原爆、戦争そのものを象徴してるんでしょうねぇ。その辺が、戦争国家であるにもかかわらず、本土空襲…... more