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『ガメラ3/邪神<イリス>覚醒』(1999)

世界各地でギャオスが異常発生。
そしてそれを追うガメラも暴走気味で、両者の激闘の際に大きな被害が出ていた。
最早ガメラは人類の味方ではないのか?
そんな時、4年前のガメラ出現の際に両親を失った少女・比良坂綾奈は、奈良のとある祠で不思議な生物を発見する。
それはギャオスの変異体と呼ぶべき存在だった。
綾奈はそれに亡き飼い猫イリスの名を与え、ガメラを倒す思いを込めて育て、一方のイリスも綾奈と同化してより進化しようとしていた。

平成ガメラ三部作の完結編。
『ガメラ3/邪神<イリス>覚醒』(1999)_e0033570_2227676.jpg前二作は高い評価を得ていたのでそのまますんなり作られるのかと思いきや、トータルの興行成績が微妙だったことや、製作サイドに若干のゴタゴタがあったため、やや間を空けての製作となった。
もう少し早く作られていたらシリーズにもっと勢いが出ていたかも知れないが、当初より完結編として位置付けられていたとはいうものの、本作を持って正式にシリーズは打ち止めとなってしまった。

さて、本作で一番驚かされるのが、実質的なヒロインである綾奈がガメラを憎んでいるという設定。
今までの怪獣映画でも犠牲となった人々の描写はあったが、それはあくまでも”悪役”のポジションにある怪獣によってもたらされたもの。
ところが彼女は、”正義の味方”であるところのガメラによって両親と愛猫を奪われたという過去を持つのだ。

その彼女と一体化することで更なる力を得ようとするイリスは、設定上ではギャオスの変異体として扱われているが、そのデザインや能力にギャオスに似る部分は殆どないという新怪獣。
勾玉を通じて綾奈とリンクするというのは、1作目のヒロイン・草薙浅黄とガメラとの関係との相似形だ。
つまりシリーズそのものを一旦否定するところから物語作りが始まるという、かなりの野心作なのである。
また浅黄とガメラの関係を一歩進め、綾奈とイリスの描写はかなりエロティック。
綾奈を演じた前田愛がどこまで意識して演じていたかはわからないが、監督は意図的に、狙って演出しているのは明白である。

1作目でもルーン文字がどうこう、アトランティス大陸が云々といっている傍から勾玉が重要なアイテムとして登場したりと”和”のテイストを伴ってはいたが、今回は舞台が奈良や京都というだけでなく、ガメラを玄武、イリスを朱雀に准えたり、”現代の巫女”朝倉美都というキャラクターを登場させたりと、怪獣映画というよりも伝奇物の側面を強く押し出し独自性を強調はしたのだが、その反面、前2作のSF映画や戦争映画の要素を気に入っていた層からは、多少なりとも拒絶反応が起こってしまったようである。
上手く活用すれば、『新世紀エヴァンゲリオン』のようなムーヴメントを巻き起こすことも可能だったのではないかと睨んでいるのだが惜しいところである。

結局のところ、メイン格の登場人物が多すぎたところに問題があったのではないだろうか。
実質的なヒロインの綾奈、キーパーソンとして設定されていたはずの朝倉美都、公式な主人公として物語を引っ張って行く長峰真弓、シリーズの顔・浅黄、美都のブレーンである倉田真也、そして今一人のシリーズの顔・大迫力、更に本来ならばヒーロー的役割を担うはずだった守部龍成、という具合にそれぞれ主人公たり得るキャラクターがこれだけいる。

長峰は狂言回しに徹して彼女自身の成長や葛藤は殆ど見られず、美都も倉田も思わせぶりな台詞を吐いて掻き回すだけで何もせず、大迫は途中で退場してしまい、守部には見せ場がない。
そしてシリーズを通してのヒロインであるはずの浅黄も、既にガメラとの繋がりが断ち切られた後とあっては存在意義すら見出せない。
唯一綾奈だけはその変説の過程が描かれて行くが、それでも内面描写が(意図的にか)外されている為、その葛藤が伝わりきらない。
映像表現含めてクオリティは高く、スタッフやキャストの熱意は伝わってくるのだが、それが負の揺らぎとして表出してしまっているのが残念でならない。

しかしながら、この三部作が20世紀の怪獣映画の掉尾を飾る意欲作、大胆な野心作であることは疑いようがない。
この作品の延長線上に、『ウルトラマンティガ』、『ウルトラマンダイナ』、『ウルトラマンガイア』といった平成<ウルトラシリーズ>の傑作群が作られ、それを意識した『仮面ライダークウガ』、『仮面ライダーアギト』といった新たな<仮面ライダー>の流れも生まれ、更に「ゴジラ」も、多分にこの”気分”を意識した<ミレニアムシリーズ>を開始することになる。
もう、平成ガメラ三部作がなかった頃には戻れないのだ。
その上でこの平成ガメラ三部作を、”傑作”と呼ぶことに異論はない。

 
 『ガメラ/大怪獣空中決戦
 『ガメラ2/レギオン襲来
Tracked from ひびレビ at 2011-04-04 07:42
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「ガメラ3 邪神覚醒」も観ました。 その前に4年前の記事見たら「心をひきつけられはしなかった」と自分で書いてやがりました。まぁ正月にだるだるっと観た時でしたからね・・・数年経てば印象も変わります(汗。 さてガメラ3。前回レギオンを倒す際に地球のマナを消費...... more
Tracked from ガメラ医師のBlog at 2011-04-04 17:32
タイトル : ガメラ:平成(金子)版視聴記など 2011/04/04
 本日二本目の更新です。一本目「4月のケズメ情報 」はこちら。 本項では、「大怪獣空中戦」から「邪神襲来」まで平成(金子版)ガメラ三部作鑑賞記事などを、まとめてご紹介しております。 前回更新分の、「金子版視聴記 /03/28 」にはこちらから。  G?論議: 『 【徒然なる...... more
Tracked from Subterranean.. at 2011-08-22 02:25
タイトル : ガメラ3 邪神<イリス>覚醒
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by odin2099 | 2011-03-31 22:27 |  映画感想<タ行> | Trackback(3) | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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