『花のあと』(2009)
2011年 05月 28日
孫四郎は女の剣だと馬鹿にすることなく真っ直ぐに打ち込み、以登の胸はときめく。それは彼女の初恋だったが、身分が違い、しかも許婚のいる身では叶わぬ想いであった。そして孫四郎は、潘の要職にある家に婿として迎えられることになる。
しかし大任を帯びて江戸へ向かった孫四郎は、お役目に失敗したとして江戸屋敷で自ら命を絶ってしまう。
孫四郎の妻・加世が、潘の重鎮・藤井勘解由とただならぬ仲にあることを知ってしまった以登は、孫四郎が罠にはめられたのではないかと疑念を抱く。
そんな折り、以登の許婚である片桐才助が江戸から戻ってきた。以登は才助を通じて事の真相を調べ始め、やがて潘内に不正があることを突き止める。やはり孫四郎は疎まれ、はめられていたのだ。
ただ一度竹刀を交えただけの男・孫四郎のために、以登は剣を手にするのだった・・・。
原作は、短編集に収められている藤沢周平の同名の小説『花のあと』で、脚本は長谷川康夫と飯田健三郎、監督は中西健二。
出演は以登に北川景子、片桐才助に甲本雅裕、江口(内藤)孫四郎に宮尾俊太郎、藤井勘解由に市川亀治郎、以登の父・寺井甚左衛門に國村隼、他、相築あきこ、佐藤めぐみ、伊藤歩、柄本明ら。
祖母が孫たちに昔話をするという形で構成されていて、その語り(以登本人であるが)を担当しているのは藤村志保。
原作ではわざわざ「美人ではない」と但し書きがある以登を、もはや『セーラームーン』時代が隔世の感のある北川景子に演じさせるのはミスキャストなのだが、この映像的嘘がなければ映画そのものが成立しなくなってしまうだろう。
女剣士の復讐劇、という部分にスポットが当てられてはいるものの、ドラマそのものは淡々とした日常描写に力が入れられ、殺伐とした雰囲気もなければアクション物の体裁も取っていない。これは藤沢周平の世界に準じたものなのだろうが、映像が美しい分、若いキャストが浮いているような気がするのは、やはり時代劇を作るシステムが衰退しているからなのだろうか。
國村隼や柄本明、市川亀治郎らの存在感は画面を引き締めているし、最初は嫌悪感が先に立つものの、やがて意外に頼りがいがある面を見せる甲本雅裕の何とも言えない大らかさ、包容力は作品全体のアクセントになってはいるが、全体的に女優陣の所作のぎこちなさは残念である。頑張りは認めるのだが。
北川景子も日本髪が似合わず、着物がしっかりと身に付いていない印象を受け、しかも始終不機嫌そうな、ぶっきらぼうな表情ばかりで魅力は半減である。
剣士スタイルの時は髪を下ろし、またキリっとした眼差しが様になっているのだが、それでも立ち回りの不安定さは惜しいところ。彼女の身体能力は、もっと高いと思うのだが。
映画そのものも今一歩といったところで、縁取りはしっかりなされているのに色塗りのミスがある絵画のようなもどかしさを覚えてしまった。
そして、一青窈の歌う主題歌は邪魔だったなあ・・・。
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なんせ、地元なもんで、応援せざるを得ないです・・。
彼女に合わせた着物を作ることは可能でしょうが、それでは時代物の衣装ではなく、あくまでも現代のファッションになってしまいそうですし。
腰の位置が大切なんでしょうかね。
戸の開け閉めなども一生懸命やっているのはわかりますが、ぎこちなく見えてしまっては減点対象。
もっとも彼女目当ての観客層などは、そういうのは気にならないのかも知れませんが。
こうした一連の藤沢周平原作の映画化は、テレビ放映版しか観ていませんけど、どれもスタンスがメロドラマっぽいというか、どこかへなちょこで気迫に欠けるというか、どうもヌルい感が拭えませんねえ。
むしろ内野氏が演じた『蝉時雨』のNHK版には惚れましたが。
勿論複数のジャンルが好きな人、全部ひっくるめて好きな人もいるわけですが、どっちかというとこういう作品は苦手、というか興味を持っていませんでした。
それがちょっとずつですが興味が出てきたということは、歳喰ったってことなんでしょうかねえ???