『惑星 ULTIMATE EDITION』 冨田勲
2011年 06月 23日
ホルスト作曲の組曲「惑星」を、シンセサイザーで演奏したアルバム。
1976年に発売されたLPは、冨田勲の代表作と言っても良いだろう。
発売後まもない時期に、たまたま友人から聴かせてもらい、「こういうサウンドがあるんだ」と衝撃を受けた覚えがある。
まだ小学生の耳には、”音楽”、”クラシック”という認識ではなく、効果音、台詞、歌、それらが混然一体となった、文字通りの”音”、その”音”の集合体として捉えるしかなかったのである。
その証拠に、数年経ってオーケストラ演奏の「惑星」を聴くまで、メロディー自体は殆ど覚えていなかったくらいである。
それからだいぶ経ってCD化された際に入手。
繰り返し聴いて行くうちに、ようやっとオーケストラ版とこのシンセ版が”同じ楽曲”として自分の中でインプットされるようになったのである。
その「惑星」が再リリースされた。
最初はリマスター盤とか、多少手直しを施した程度の、いわゆる”お色直し版”かと思っていたのだけれども、聴いているとかなり違う!
全体の構成は概ね同じなのだが、音に厚みが増し、一段と聴きやすく、かつ迫力のあるものになっているのだ。
そして「木星」と「土星」の間に、オリジナルの新曲「イトカワとはやぶさ」。
勿論、丁度一年ほど前に小惑星イトカワからサンプルを持ち帰った惑星探査機はやぶさをモティーフにしたものだが、同時に親交のあった故・糸川英夫博士へのレクイエムでもあるらしい。
生まれ変わった「惑星」は、従来のヴァージョンに親しんだ人にも十分アピールするものとなるだろう。
以上は、本家サイト内「耳をすませば」に書いたレビュー。
そしてここからは、裏レビュー(笑)。
管制官とパイロットとのやり取りがあり、ロケットの打ち上げがあって、各惑星を訪ねて回る、という構成はオリジナルと一緒。
でも実際は先に書いたように”お色直し版”ではなく、リメイク。
というか、再演奏版という表現の方が良いのかな。
先ず驚いたのは人声。
オリジナルだと何を言っても歌っても「パーピープーペーポー」にしか聞こえなかったのだけど、この新版だと若干の改善が見られ、なんとなーく会話っぽく聞こえなくもないこと。
・・・といっても、あれから35年も経ってるんだから、もうちょっと自然に聞こえても良いのに。それともわざと?
あと、それぞれの曲の演奏時間が結構違うこと。
まあ1分までは違わないと思うけど、それでも「火星」や「金星」はオリジナルよりも長いし、反対に「水星」や「天王星・海王星」は短くなってたりする。このあたりの意図は不明。
で、一番の驚きは新曲の追加でしょうね。
「イトカワとはやぶさ」――「木星」と「土星」の間に挿入されましたが、オリジナルだとこの2曲、「天王星・海王星」のように1トラックで収録されていたんですよね。
まー、随分と思いきったことを。
でも正直言って・・・この曲イラネ。
ただ皆さん、やりたいんでしょうね。
コリン・マシューズの「冥王星」は有名ですが(そして存在意義を見失っちゃいましたが)、他にも小惑星や彗星を追加した人や、「地球」を追加しちゃった人もいるし。
私も当時ラジオ&ハム少年だった友人に聴かされてそのままテープダビングして持ち帰ったクチですが、土曜洋画劇場のED曲が『木星』で、そのタイトルを苦労して調べて調べて探し宛て、バーンスタイン版を得たたばかりだったために、むしろ「ぱぁ、ぷぅう、ぱぁあ」に別な意味で仰天しましたが。
冨田勲はむしろ『宇宙幻想』にハマりました。タンホイザー、ソルベーグの歌、パシフィック231は今もシンセ版の方が大好きです。惑星とともにジャケットが当時流行最先端のブラシアートでしたねえ。
“追加曲”のある惑星は知りませんが、あるとしたらプロメテやミネルヴァはどんな曲になるんでしょうねえ。
と同時に限界も感じましたが・・・。
しかしなんでこのタイミングでリメイク盤リリース?
と思いましたけど、「イトカワ」と「はやぶさ」が注目集めてるのに託けて、糸川博士に捧げたかったんでしょうね。
追加曲はいずれも微妙・・・。
やりたくなる気持ちはわかりますけど。