『トワイライトゾーン/超次元の体験』(1983)
2011年 08月 20日
日本では『未知の世界』あるいは『ミステリー・ゾーン』のタイトルで放送された伝説的シリーズを、ジョン・ランディスとスティーブン・スピルバーグが手を組み、更にジョー・ダンテとジョージ・ミラーを巻き込んで映画化ということで話題になりました。
この当時ランディスは『ケンタッキー・フライド・ムービー』、『アニマル・ハウス』、『ブルース・ブラザース』、『狼男アメリカン』のヒット作があり(ちなみに同じ頃、マイケル・ジャクソン『スリラー』のPVを撮ってます)、スピルバーグは勿論『ジョーズ』、『未知との遭遇』、『レイダース/失われた≪聖櫃≫』、『E.T.』といったメガヒット作品を持ち、ダンテは『ピラニア』と『ハウリング』で注目を集め、ミラーは『マッドマックス』でスマッシュヒットを飛ばしていた、という具合に若手のビッグネームが集ったドリーム企画でした。
各人が一篇ずつ監督するというオムニバス作品ですが、ランディス監督のパートを撮影中にヘリコプターが墜落し、乗っていたパイロットは勿論、主演のヴィク・モローや子役たちが死亡するという痛ましい事故が起きてしまいます。
監督責任やら何やら、その対応を巡ってランディスとスピルバーグの間には何やらあったようですが、結局スピルバーグはピンチを脱し更にキャリアをアップさせたのに対し、ランディスは負のイメージを背負って低迷することとなります。
お互いの作品にお遊びで出演するほど仲が良かった二人(スピルバーグ監督の『1941』にはランディスが、『ブルース・ブラザース』にはスピルバーグが出演している)も、それ以後は絶縁してしまったのだとか。
ダンテがその後スピルバーグの寵愛を受け、『グレムリン』とか『インナースペース』とか『スモール・ソルジャーズ』などを撮るようになるのとは好対照・・・。
先ずプロローグがあります。
深夜ドライブ中の二人はTV番組のテーマ曲当てをしておりますが、その内「トワイライトゾーンは良い番組だったよなあ」てな話をし始めます。
「みんな怖くて良かったよ」
「そうだな」
「もっと怖いもの見せてやろうか?」
すると・・・?!
このプロローグはランディスの演出ですが、これがなかなか効いてます。正直番組のテーマ曲当てなんかサッパリわかりませんけど、日常世界から一気に物語世界へ。お馴染みチャラララ~チャラララ~チャラララ~のテーマ曲が流れ、タイトルが出て第1エピソードが始まります。
問題のランディス監督作がこの第1エピソードで、他の3つはTVシリーズのリメイクですが、これはランディスのオリジナルだとか。
人種差別主義者が時空を超え迫害されるというお話なのですが、これがサッパリわからないものに。ラストシーンが使えなくなってしまったからなんでしょうか。
第2エピソードはスピルバーグの監督作品。
老人ホームで暮らす人たちが少年少女に戻るというファンタジーで、4篇中では一番温かみがあるものの、今一つピリっとしたものが感じられません。
ちなみにこの映画の音楽はジェリー・ゴールドスミスなので、スピルバーグ監督作品(TVを除く)でジョン・ウィリアムズ以外の音楽が流れる貴重な作品でもありますね。
第3エピソードはダンテの担当。
超能力を持った少年とその家族の物語ですが、可もなく不可もなく――というより、かなり悪趣味な、と言わざるを得ない作品でした。
少年に魅入られた女教師が主人公なのですが、彼女と少年との心の交流に重点を置くか、それとも怖がらせるのか、ハッキリさせた方が良かったのでは?
最終エピソードは、嵐の中飛び立った旅客機の翼の上に怪物の姿を見てしまった男の悲喜劇。
神経質そうな男を演じたジョン・リスゴウの好演と相まって、これが本作中唯一の秀作。この一篇の為だけでもこの映画を見る価値はある、というのは言い過ぎかも知れませんが、それぐらい(他の作品に比べて)良く出来ています。
その後、プロローグとの繋がりを感じさせるエピローグがあり(どちらもダン・エイクロイドが出ています。同一人物かどうかはわかりませんが)、そしてエンドクレジット。
夢か現か、”トワイライトゾーン”から我々は呼び戻されるのですが、”あちら”の世界の方が良い、と仰る方もいるんでしょうね。
今回、公開以来の再鑑賞でしたが、印象はやっぱり、ウーン・・・。
当時、これを見て一気にスピルバーグへの期待値が下がったんですよね・・・。
1983年 アメリカ映画 101分 ホラー/SF/ファンタジー 総合評価★★★★ “未知の世界”“ミステリー・ゾーン”のタイトルで日本でも放映されていた、1959年にアメリカで放映開始された人気TV番組を、番組のファンであったスティーヴン・スピルバーグやジョン・ラ…... more
じつは“はげしく同意”なんですよ。ジョーズ以来、ずっと彼の作品を追いかけてた私は、当時わくわくしながら劇場へ足を運んだのに、ずいぶんテンション下げて帰った記憶があります。
今考えたらスピどん、SF、ものごっつぅヘタですよね。
というか、この人の専門はディズニーアニメっぽいおこちゃまファンタジーであって、SFマインドというか、科学的考察要素や哲学的思索面が表に出るともうボロボロ。
1941でもそうですが、コメディセンスも皆無ですしね。
CE3Kは名作と言われるものの、とうていSFとは言えないし、ET(実は未だに未見)もそうですよね。
アイデアマンだし企画力と行動力、さらに後進の逸材を見つけるのもすごく巧い。
でも残念ながら、ご本人にSFセンスはない。もっともセンス・オブ・ワンダーを問われるようなこの作品のリメイクも、いまにして思えば、あいたたたた、な結果は当然だったと思えるようになりました。
で、次のスピルバーグ印が『グレムリン』で、それから『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』、『グーニーズ』と自分にとっては得心の行かない作品ばかり。
ま、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は良かったんですが、挙句の果てにその次が『カラー・パープル』という全く興味の持てない作品だったので、一気にスピルバーグ熱が冷めてしまった切っ掛けになった作品でもありました。
SFが下手なのかどうかは兎も角、この時期は色々なことがコントロール出来なくなっていたんじゃないでしょうかね。
基本的にはどんな企画でも映画会社はゴーを出したんじゃないかと思うし、自分の監督作以外もスピルバーグ印、スピルバーグ・ブランドならば日の目を見るという状態だったわけですし。
結局自分がスピルバーグ印に惹かれるようになったのは、『ジュラシック・パーク』まで待たなくてはなりませんでした。