『宇宙戦艦ヤマト/復活篇<ディレクターズカット>』(2011)
2012年 01月 14日
ディレクターズカットは完成しないだろう、上映会もやらないだろうと内心思っていましたが、どちらも実現しました。ただ都内近郊在住の人以外には、やはり不親切なものになってしまったのは残念ですが。
また西崎監督亡き今、誰にとっての「ディレクターズカット」なのかというのも疑問ではあったのですが、見終わっての率直な感想は、「劇場公開版よりも楽しめました」。
以降、ネタバレ含みますのでご注意を。
基本的な流れは、当然ながら公開版と同じです。
30分程度の新規シーンを追加とありますが、何故か上映時間は10分以上短くなっているのですが、その秘密はラストシーンにあります。
公開版では採用されなかったアナザーエンディング、つまり地球がブラックホールに飲み込まれて終わるからで、6連波動砲を撃つシークエンスが丸々カットされているからです。
今回も「第一部完」のテロップはそのままですが、物語が途中で終わってしまうため、更にそれが強調された感じです。真帆ちゃんも死にません。
他にも細かく削られたシーン、セリフもあります。
一例をあげると大村副艦長の、「一人身の俺に怖いものなんかねーんだ」というつぶやきなど。
もちろん「地球を舐めるなよ、宇宙戦艦ヤマトを舐めるなよ」のセリフは残ってますが。
また冒頭で第一次移民船団が襲われるシーンですが、雪のヌードはなくなりました。
追加されたシーンは、治療中の上条を小林がからかい、それを美晴が咎めるシーンとか、古代が小林に加藤のユニフォームを託すシーン(設定上は加藤”三郎”のものだそうですが、なんで古代はこれを持っていたんでしょうか。形見なら弟の”四郎”に渡すべきでは?)、上条、小林、真帆、桜井、美晴らメインクルーに対し古代がお礼を言い、その直後に艦長室から出た一同が娘の美雪を話題にするシーン等々。全体的にキャラクターを膨らませる改変なので、これはありだと思いました。
またラスト近くで、残存人員などの救助や移動にあたる艦として、ブルーノア級のブルーアース、アンドロメダ級のアンドロメダA12、アリゾナ級のペンシルバニア、更には浮動実験艦ムサシなども登場します。
ただ、大村が以前古代に救われていた回想シーンなど、当初発表されながらも結局日の目を見なかったシーンも依然残っています。これらを含め、2時間45分程度で<ディレクターズカット>を製作するとの話でしたが、どうせなら<エクステンデット・エディション>も見てみたいものです。
そして今回の売りの一つが効果音の変更で、基本的に旧作のものが使われています。
『宇宙戦艦ヤマト』とタイトルが出る際の効果音が、オリジナルのものに直ったのは嬉しいですね。公開時にこれが一番違和感があった部分なので、これでやっとシリーズの一本になったんだなと実感しました。
主砲の発射音などは逆にあまり気にならなかったのですが、ファンからはかなり不満の声が大きかったのでしょう。パワーアップして、というより事実上修復ではなく再建された新生ヤマトなのですから、音が変わっていても当然だと自分は思っていたのですが、オリジナルの音に戻れば戻ったで、やはり懐かしくはなります。
それでもブルーノアの主砲の音まで旧作ヤマトと同じになっちゃったり、大ウルップ星間国家連合の艦隊の音まで旧作準拠だと、ちょっとやり過ぎの感があります。まるでファンが作ったMAD作品のような気さえしてきます。
また今回入れ替えになったのは効果音だけかと思いきや、かなりの量のBGMが差し替えに。
前半部分はそれほどでもないのですが、後半になるとほぼ別物で、クラシック音楽が激減します。印象的だったグリーグのピアノ・コンチェルトもなし。その代わりに山下康介の書いた『復活篇』用の未使用曲や、『さらば』、『永遠に』、『完結編』などからの流用曲や出典不明曲(いずれかの作品の未使用BGMか?)が使われ、「ヤマト」ムードは強調されました。
ヤマト発進シーンに流れる「宇宙戦艦ヤマト2009」も、THE ALFEEの歌ではなく、インストルメンタル・ヴァージョンに。これも個人的には嬉しい改変でしたね。逆にエンディングには「この愛を捧げて」がナレーション被らずにフルコーラス流れます。
公開版では最後に様々な人への献辞が出て終わりますが、今回はただ一文、
「故 西﨑義展に捧ぐ」――と。
リメイク版の『宇宙戦艦ヤマト2199』も良いですが、やはり三部作構想だというこの『復活篇』を、故人の意思を継いで何としても完結にまで導いて行って欲しいものです。
周囲が『2199』で盛り上がってる中、一人で『復活篇 <ディレクターズカット>』について語るぞえ(笑)。 いいのさぁ。田舎暮らしの子持ち主婦は、自分のタイミングとペースで生 ...... more
ヤマトらしく、チグハグなところがあるようですが・・・。(笑)
「古代が小林に加藤のユニフォームを託すシーン(設定上は加藤”三郎”のものだそうですが、なんで古代はこれを持っていたんでしょうか。形見なら弟の”四郎”に渡すべきでは?)」
『復活篇』とは別物として楽しめそうですね。
ファン間の不満解消作品のような感じがしますね。
それで興業収入を上げるつもりなのかも?(笑)
無事、物語として完結していただき、今度こそは沈没させないで欲しいです。
勿論作品の出来云々とは別物ですし、個人的にはどちらにも満足点・不満足点ありますので、単純にどちらが良いとは言えないんですが。
製作サイドとしてはどちらか一本ではなく、『さらば』と『ヤマト2』のように両ヴァージョンが共存して欲しいみたいなんですが、それは難しいでしょうね。
第2部が作られるとしたら、確実にどちらか一本のラストシーンから繋げるしかない訳ですから。
ともあれ、こちらも一本の作品として完成されたものになっていますので、機会があれば是非ご覧ください。