『わんぱく王子の大蛇退治』(1963)
2012年 01月 15日
こういうキャラクターはあまり好きではないが、まあ面白いのではないか。
テンポなんかは確かに古いが、ディズニーが何度もリバイバルしていることを考えれば、東映動画作品ももっとやればいいのだ。
今の時代でもきちんと評価されるはずだ。
それはさておき、この頃の東映動画作品は確か皆フルアニメーション。
その割には細かい処がちょっと、という気がしないでもないが、全体的にはよく動いている。
そして音楽。
正直この映画は伊福部先生が音楽を担当しているから、という理由で見たのだが、凄い。
雰囲気的に似た曲、というのもあるのだけれど、そのものズバリ、という感じで「地球防衛軍マーチ」や「自衛隊マーチ」が流れてのけぞったりする。
八岐大蛇が暴れまわるシーンなんかは伊福部メロディがピタリくるし、日本神話という題材にもはまっていると思うのだが、いかんせん画面が負けている。
というかディズニー以来の軽さ、といったものに雄厳な伊福部メロディは浮いてしまうのだ。
なんでこんな大げさなメロディがとか、逆になんでこの映画は実写ではなくアニメなんだ等と思ってしまった。
伊福部昭はアニメーション向きの作曲家ではないようだ。他に担当している作品もないようだし。
えーと、これは四半世紀近く前にこの映画を見た時の感想。
他人に読ませることを前提にした文章ではないのでアレだが、今回久々に見直しての感想も概ね同じ。
ちなみにタイトルの「大蛇」は、「だいじゃ」ではなく「おろち」と読む。
東映動画の長編作品としては6作目になるようで、脚本は池田一朗(後の隆慶一郎)と飯島敬、演出(監督)は芹川有吾でこれが監督デビュー作。
森康二が初の原画監督(作画監督)を務め、演出助手に高畑勲、矢吹公郎の名前が見える。
スサノオの声を演じた住田知仁は、子役時代の風間杜夫のこと。
海外ではギリシャ神話や聖書に材を採った映画は沢山あるけれども、我が国で神話・伝説をストレートに映像化したものってあまりないはずなので、その点でもこの作品は貴重。
東宝の特撮映画で『日本誕生』(これも音楽が伊福部先生)と『ヤマトタケル』ぐらいかなあ、思いつくの。
但しこの映画を鵜呑みにして(?)「古事記」や「日本書紀」に当たろうとすると結構戸惑うかもしれないし、イザナミの”死”というものを曖昧にした強引なハッピーエンドは、いくら子どもむけとはいえ甘すぎやしないかという気もするのだが。
ところでヤマタノオロチの「オロチ」という言葉に、本来は「大蛇」の意味はないらしい。
河川の氾濫を現しているのだとか、地方の敵対勢力の暗喩だとか、はたまた「チ」はやはり「蛇」の意味があるのだとか、学者や専門家の間でも諸説あるらしいのだけれども、この作品で描かれているような巨大怪獣の方が夢があって良いなあ。
とはいえ、今でこそ名画劇場も消滅しつつあるのですが、逆に当時の東映長編ならではの独特のテイストは、ああいうスクリーンなら素晴らしく映えそう。
ちなみにコレ、すぎやま先生だったら全然印象変わるかも。
伊福部先生、時代劇でも合いにくいんですよ。やはり特撮の印象が強すぎるんでしょうか。
そうですか、あの泣きわめく見事な演技は風間さんでしたか。
たしかかの人は何かのインタビュー番組で無名時代にV3のスーツアクターもバイトだかでやったような事を言われてました。役者ってのはほんまにどれだけ経験値持ってるか、みたいな所がありますね。
ところでこのオロチを見ると、最初の劇場版009に出た海竜も森康二先生だったのかと納得しました。
『白蛇伝』やこの『わんぱく王子』あたりでは流石に古いかも知れませんけど、『ホルス』や『なが猫』、『ど宝』あたりなら子どもたち喜ぶんじゃないでしょうか。
風間さんは多分、デパートなどのショーでV3を演じたことがあるんだと思います。撮影ではないでしょう。
実際に撮影でスーツに入ったのは、『仮面ライダーZX』特番の時にライダーマンに入った唐沢寿明。
その後もCMで熱血キッドやったり、ダイワマンXやったりと初心を忘れてません(?)ね。
伊福部センセの時代劇というと、東宝オールスターの『忠臣蔵』を見ましたが、赤穂浪士のチャンバラよりもゴジラが暴れまわりそうな立ち回りの音楽でしたっけ。
すぎやまセンセだとどうかなあ・・・あんまり”和”物には合わないような気がします。
日本の神話よりはギリシャ神話とかそっちのイメージ。『サイボーグ009』では北欧神話にチャレンジしてましたけど。
ある意味で『ドラクエ』はその延長線上かと。