『彼女が追ってくる』 石持浅海

今は独立して起業している中条夏子は、昔の会社の同窓会に招かれ、同じ頃にやはり独立して起業した親友の黒羽姫乃と再会した。かつて二人は同じ男性を愛したことがあったのだが、その彼は３年前に事故死。しかし夏子はその原因を作ったのが姫乃であると確信し、復讐を果そうとしていたのだ。
やがて計画通りに姫乃の死体が発見される。夏子は捜査の手を逃れる自信を持っていたが、何故か容疑は彼女ではなく別の人間に。一体どこで何が間違ったのか。自分は姫乃に勝ったはずなのに。
そんな彼女の葛藤を知ってか知らずか、冷やかに見つめる一人の女性の目があった・・・。

『扉は閉ざされたまま』、『君の望む死に方』に続いて、碓氷優佳が探偵役として登場するシリーズ３作目。
このシリーズでは犯人は最初から明らかにされていて、後は優佳が如何に真相に迫っていくか、がポイントなワケですが、相変わらず彼女、怖いです。
童顔で細身の美人、と形容されているものの、その洞察力の鋭さは並みじゃありません。傍にはいて欲しくないタイプですね。
まあこの頭の良さは、もしかすると本人にとっても苦痛な面もあるかも知れませんが。

殺人事件が起こり、周囲の人間が右往左往し、犯人と疑われた人間も登場し、という状況下でも、優佳は冷静に分析し、即座に夏子の仕業であることに辿り着きます。そして更に、夏子も知らなかった姫乃の隠された顔をも暴きだすのです。
最後を曖昧にし、しかも後味があまり良くない形で終わるのもシリーズのお約束。

そうそう、前作のラストは結局どういうことになったんだろう？
そういえば今回、準ヒロイン格で活躍する優佳の友人・堀江比呂美は、実は前作からのスライド登板だってことに途中で気が付いたりして。
またこの作品での優佳は婚約中という設定なので、第４弾があるとすれば、今度は若妻・優佳として登場してくるんでしょうかね（お相手はやっぱり伏見くん？）。次も読んでみたいような、怖いような・・・。
あ、単行本未収録の短編が幾つかあるようで、これは読んでみたいですね。

あと、前２作はそれぞれWOWOWでドラマ化され、『扉は閉ざされたまま』では黒木メイサ、『君の望む死に方』では松下奈緒がそれぞれ優佳を演じてましたが（自分のイメージ的には黒木メイサの方かな）、この作品はドラマ化なり映画化なりされないのかな。
どっちの映像作品にも不満があるので（しかも繋がらないし）、今度作る際にはもっと原作の良さを生かした作品にして欲しいもんですが。