『ラ・パティスリー』 上田早夕里
2012年 02月 28日
主人公の森沢夏織はここで働く新人の洋菓子職人で、今日も一番に出勤して、皆が出てくる前に準備を整えようとしていた。ところが誰もいない筈の厨房で、飴細工作りをしている見知らぬ男性を見かける。
市川恭也と名乗ったこの男性はこの店のシェフだと言い張るのだが、夏織は勿論、オーナーも出勤してきたスタッフも誰一人彼のことを知らない。ところが恭也の腕は一流で、しかも店のレイアウトの隅々まで熟知しているのだ。どうやら彼は記憶の一部を失っているようだが、彼に繋がる手掛かりは杳として知れない。
やがて夏織は、店で働くことになった恭也に少しずつ惹かれていく・・・。
記憶を失った人物がフラっと現れるところから始まるので、ミステリー仕立てなのかなと思いながら読んでいたのですが、お菓子作りを通じて人と人との繋がりを描いた暖かいお話でした。
恭也の正体と、記憶を失うに至った経緯やその理由に関しては納得しかねる面もありますし、ちょっと癖のある人物がいないでもないですが、基本的には善人ばかりで大きな事件が起こるわけではありません。それでも一歩ずつ確実に、ヒロインである夏織は成長していきます。
最近続編が出ましたが、続きが読みたい、と思わせてくれる作品でした。





