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『ラ・パティスリー』

『ラ・パティスリー』_e0033570_22121924.jpg先日読み終えた上田早夕里の同名小説を舞台化したものです。
サンシャイン劇場で3日から11日まで、その後は20日に大阪の森ノ宮ピロティーホール、22日には金沢の北國新聞赤羽ホールで上演されるとのこと。
出演は井上正大、高橋愛、村井良太、酒井美紀、平賀雅臣、朝倉伸二、西村直人、梅田悠、加藤雅美、それに阿知波悟美で、脚本・演出は藤井清美。

井上正大と村井良太が共演するお芝居がある!ということを知って、「おおこれは面白そう」と発売日にチケットを取ったのですが、これが結構後ろの席でしかも端っこ。
一般的にはそれほど知名度のあるキャスト陣ではないと思いますし、原作もベストセラーというほどではないはずですが、なかなかコアなファンが多いということなんでしょうね。
会場には、如何にも「モー娘。時代から高橋愛を追いかけてます」風の人を何人も見かけましたが、あれ?もしかするとSDN48のファンなのかしらん? 全然知らなかったんですが、加藤雅美と梅田悠の二人がSDN48のメンバーなんだそうで。

『ラ・パティスリー』_e0033570_22123621.jpg井上正大は、記憶を失ったパティシエ=市川恭也を演じますが、なんだかデジャ・ヴを感じる設定ですね。
「記憶喪失で料理が得意なら賀集利樹だろ?!」とツッコミを入れつつ、あの長身はなかなか舞台映えするもんだねえ、とスケールの大きさを感じました。ただ、細いというか高いあの”声”はどうかなあという一抹の不安はあったのですが、なかなかどうして堂々たるもの。
原作と違って森沢夏織と同世代という設定のようですし、それ故か原作ほどクールというか、客観的な視点は持ち合わせていませんが、某”世界の破壊者”と違った爽やかな好青年キャラも良いものです。

その相棒となる吉野を演じるのが村井良太で、『テニスの王子様』、『仮面ライダーディケイド』に続いて三度目の共演になるのだとか。
最初は恭也とかなり距離感がありながら、最後の方では見事なコンビネーションぶりを見せてくれるのは、これは役を離れてもお互いに通じるものがあるからなんでしょうかね。二人のインタビューのコメントを見ても、互いの信頼感の高さを感じさせてくれます。
ちなみに原作の吉野は恭也ともあまり絡まず、実は決して比重の大きくないキャラなのですが。

原作でのヒロイン・夏織を演じるのは高橋愛。実年齢を考慮してか、一度社会人になった後で専門学校へ入り直した、という経歴の持ち主に変えられています。どちらかというと狂言回しに近いポジションで、実はメインストーリーには殆ど絡んできません。
新人パティシエらしい可愛らしさは出てますが、他にも可愛らしさという点ではバイトの女の子が出てくるし、本来のヒロインとしてはちょっと存在感が薄い気がします。

『ラ・パティスリー』_e0033570_22125598.jpgということで、覚悟はしていたものの、原作とはかなり違う内容になっています。キャラクターも変えられていたり、出てこなかったり、反対に舞台版オリジナルのキャラクターが何人か追加されたり。
ラストシーンも全く異なるものですが、ただちょっぴりほろ苦い原作ラストに比べると、こちらの希望の持てる明るいラストも良いなあ、とも感じました。
ちょっとご都合主義で甘過ぎる部分もありますし、原作全篇のラストというよりも、途中のエピソードでとりあえず締めた、ということなのかも知れませんが、それでも好きですね。

上演時間は休憩なしの約1時間50分というコンパクトさ。
記憶喪失者が出てきたり、お店の存続や家族の確執などやや深刻な問題が出ては来るものの、大きな事件らしい事件もない、凄く居心地の良い空間が味わえますし、何よりも出てくるケーキが皆美味しそう。ケーキ好きとは言えない自分でも、ついつい一つか二つ買って帰りたくなる、そんなお芝居でした。
by odin2099 | 2012-03-04 00:11 | 演劇 | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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