『茶坊主漫遊記』 田中啓文
2012年 03月 17日

一方、三成存命を知った将軍家光は、柳生十兵衛にその暗殺を命じ・・・という歴史の「IF物」ではありますが、ユーモラスな語り口、そして決して史実を蔑にしたファンタジーになってはいない匙加減がなかなかの逸品ではないかと思います。
他にも宮本武蔵や天草四郎など、歴史上の有名人も顔を出して一向に絡んできます。
全体としては「水戸黄門」を意識した構成になっていて、特に三成が「カッカッカッ」と笑う様は、これは東野英治郎以外の何物でもないですね。”石田三成”のイメージとはちょっと遠い気もしますが。
最後には三成の目的も明らかになり、かなりの歴史上のどんでん返しも描かれるなど綺麗に終わります。
「水戸黄門」のようにこの老・三成にも何度か世直し旅に出て欲しいものですが、この設定では仮に外伝は作れても続編は無理でしょうね。ちょっと残念ですが。

三成にいいようにあしらわれる十兵衛が人間味溢れる好人物でした。 ちなみに、ここの三成はへいくゎい成分ゼロの好々爺です。 関ヶ原の戦いから34年後の夏、地蔵と見紛う小柄な老僧と容貌魁偉な従者の一行が街道を行く。実はこれ、京都六条河原で斬首されたはずの石田三成…... more
ご挨拶が遅くなりまして申し訳ありませんです!
ご指摘の通り、ここの三成と史実の三成はどうあってもイメージが重なりませんね(苦笑)。
でもそれが気にならないくらい物語が成立しているので、
自分も終始楽しく読むことができました。
十兵衛がなかなか良い脇役だったと思います。
最後、あれほど綺麗に幕を下ろされてしまっては
続編が期待できそうにないのが勿体無いですよね。
このような短編集はあまり見かけないので
もっと読みたかったというのが正直なところです。
いっそ皆が三成だと思っているだけで、実は別人、なんていう設定でも面白かったかも、なんて思ってしまいました。
なんせこの御老公、ちっとも三成っぽくないですし(笑)。
道中を水増しする様な外伝は作れるかもしれませんけど、続編となると難しそうですよね。
そこが素晴らしくもあり、勿体なくもあるところなんですが。