『笑う娘道成寺』<女子大生桜川東子の推理> 鯨統一郎
2012年 05月 24日
それにヒロインの桜川東子の名前が、とうとうサブタイトルに昇格してますね。どちらかというとこの一連の作品群は、<桜川東子シリーズ>と呼んだ方が通りが良いような気もしますが。

それぞれ元ネタに准えた事件が起きるのですが、最初が童話、次が昔話、そして前回のギリシャ神話ときて、今回のお題目は歌舞伎。表題作以外に「笑う女殺油地獄」、「笑う曽根崎心中」、「笑う白浪五人男」、「笑う勧進帳」、「笑う忠臣蔵」、計六編から構成されています。
ただ今回はここに、歌舞伎好きのOL阪東いるかという新キャラクターが登場。二編め以降は週一のアルバイトとしてレギュラーになり、会話にもアクセントが付くようになりました。テコ入れということでしょうかね。
しかしながら、相変わらず本筋に関係のない、ヤクドシトリオの蘊蓄満載(?)の昔話の方が面白く、肝心のミステリー部分、事件の概要とその謎解きは元ネタに沿い過ぎていて無理矢理感が強いですね。ミステリー物としてではなく、このバカ話を愉しむのがこのシリーズとの賢い付き合い方なのかも知れません。とりあえずシリーズが続く限り付き合う所存ではありますが。
それにしても今までノベルズ→文庫という形だったこのシリーズなのに、なんで今回はソフトカバーでの刊行になったんでしょ? 余計な出費が・・・。

笑う演目じゃないのに「笑う~」というのがいろんな意味で気になります。
あまり「笑う」には意味がありません(苦笑)。いずれも殺伐とした(?)殺人事件がテーマなので。
面白いのは、本筋に関係ないトリビア・ネタと、モティーフにされている歌舞伎の演目に対する作者なりの新(珍?)解釈の方です。
「白浪五人男」だったら実は菊之助は死んでないんじゃないかとか、「娘道成寺」だったら物語に登場しない清姫のライバルがいたんじゃないかとか、「曽根崎心中」は心中じゃなく殺人だったとか、そっちの方に興味を惹かれるかも。