『トータル・リコール』（2012）

フィリップ・Ｋ・ディックの短編小説『追憶売ります』二度目の映画化！――ではなく、ポール・バーホーヴェン監督、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の映画『トータル・リコール』のリメイク版です。

シュワちゃんが演じたダグラス・クエイドはコリン・ファレル、レイチェル・ティコティンが演じたメリーナはジェシカ・ビール、シャロン・ストーンがブレイクする切っ掛けとなったローリー役はケイト・ベッキンセール、他にブライアン・クランストン、ボキーム・ウッドバイン、ジョン・チョウ、ビル・ナイらが出演してます。

監督のレン・ワイズマンはケイト・ベッキンセールの旦那さん。そのせいかローリーの比重が大きくなっていて、旧作では中盤で退場してしまいますが、今回は旧作でマイケル・アイアンサイドが演じたリクターというキャラクターの役回りも兼ね、最後まで姿を見せています。

旧作では火星が舞台になっていましたが、「火星に行きたいなあ」という台詞はありますが本作は地球のみ。荒廃した未来の地球は裕福なブリテン連邦（ＵＦＢ）と貧しいコロニーに二分化され、コロニーを完全に支配下に置こうとするＵＦＢと、そこからの独立を目指す市民グループとの間に対立があり、主人公のダグ――実はＵＦＢから送り込まれた凄腕のスパイ、カール・ハウザーだという、本人も知らない（？）別の顔がある――が揺れる、という構成は、ほぼ旧作通りです。
面白いのはＵＦＢが『マイノリティ・リポート』っぽい世界として描写されてるのに対し、コロニーがどことなく『ブレード・ランナー』風の世界に見えること。どちらもディック原作の映画化作品ですが、単なる偶然なのか、それとも製作側の遊び心なのでしょうか。

なんで今更リメイクなんで、と思いましたが、”超人”然としたシュワちゃんではなく、素人っぽさが垣間見えるコリン・ファレルを主役に据えたことで、旧作とは違った面白さが出ています。
また女優陣も旧作より上・・・と書こうと思ったのですが、せっかくケイト・ベッキンセールとジェシカ・ビールを起用しているのですから、もうちょっとセクシーなシーンがあっても良かったかと。またシャロンは時折可愛さを見せる場面がありましたが、ケイトは終始強面なのでそのあたりが残念でしたね。それにレイチェル・ティコティンより美人度は上なジェシカですが、シャロンとレイチェルが明らかに違う系統なルックスなのに対し、ケイトとジェシカは若干被る部分があるので、アクション・シークエンスなどでは「あれ？どっちだろう」と何度か思ってしまったのはナイショです。
とはいえ、二人はかなり動けるので迫力のある対決シーンになっていました。

旧作は、結局は全てダグの見た夢だった、というのが公式な（？）解答らしいのですが、本作でもどちらにも取れるような演出はなされています。
ダグは本当に英雄にして二重スパイのハウザーだったのか、ローリーは最愛の妻ではなく監視役にして殺人マシーンだったのか、どちらがより相応しい”真実”なのでしょうか。

さて今回も吹替版を選択。
クウェイド／森川智之、メリーナ／本田貴子、ローリー／岡寛恵、コーヘイゲン／金尾哲夫、
マサイアス／小川真司、ハリー／楠大典、マック／猪野学、ハモンド／根本泰彦・・・と安定してますねー。どうして全作品こう出来ないもんかなあ。