『神拳 李酔竜』１ 高千穂遙

WWWAのトラブルコンサルタント・李酔竜と、彼のアシスタントで双子の少女・鈴鈴と蘭蘭の活躍を描く「痛快ＳＦアクション」シリーズの第１巻。「夜光珠魔城」と「アラクネ花一輪」の二篇を収録。

李酔竜というキャラクターは『ダーティペアの大乱戦』所収の短編「そして誰もしなくなった」に登場したゲストキャラクターだが、設定も新たに彼を主人公に据えたスピンオフ作品を誕生させた。

同じWWWAのトラコンが主人公とはいえ、ダーティペアが女の子二人のドタバタぶりで楽しませてくれるのに対し、李酔竜はストイックで寡黙、だがやたらめったら強い、と差別化が図られているので違った魅力がある。

また、構成もヒーロー物の典型というか、時代劇っぽい。クライマックス、ゲスト主役たちがあわや、という時に李酔竜が颯爽と現れるのだが、
　「風が啼く。炎が走る。波騒ぐ」
　「非道に怒り、神が呼ぶ。悪を斃せと、俺を呼ぶ」
　「李酔竜、天の命にて、ただいま推参」
と、名乗り口上も正にそれ。

作者自身、「WWWAは巨大な組織で、そこには無数のヒーローやヒロインがいる」と語っているように、今後第三、第四のトラコン（に限らず他の分野のコンサルタントでも可）を主人公にした新作が出ることもあるかも知れない。