これ、「ハウル」の続編じゃなくても良かったんじゃないかなあ、と改めて読んでみて思いました。主人公はアブダラという絨毯職人の青年だし、ヒロインは<夜咲花>というお姫様で、この二人のラブストーリーが、空飛ぶ絨毯が出てきたり瓶の精霊が出てきたりという「千夜一夜物語」の世界を舞台にした冒険物語の中で語られるという流れです。

終盤になると前作の登場人物である魔法使いのサリマンやレティーが出てきますし、もちろんハウルもソフィーもカルシファーも出てくるのですが……ネタバレしますけど、ぶっちゃけ彼らは最初のうちから姿形や名前まで変えて出てきてはいるんですよね。そして最後の方でその正体がわかるのですが、だからどうしたの?という部分も無きにしも非ず。おそらくハウルやソフィーたちの「その後」が知りたい!という人も期待にも、あまり応えてくれるものにはなっていないのではないかと思います。
だからといってこのお話が詰まらないというわけではなく、むしろわかりやすさ、素朴な愉しさという点では前作より上だと思っています。なのでなおさらハウル抜きでも、あるいはハウル抜きの方がより完成度が高くなったんじゃないのかなあと思ったりもするのですがねえ。
さて、このあとにはシリーズ完結編と謳われている待望の第3巻が待っているのですが、はたして完結編に相応しい内容になっているのか、それとも単なる3冊目でしかないのか、どちらなんでしょうね。
前回の感想は
こちら。