『ばけもの好む中将/平安不思議めぐり』 瀬川貴次
2013年 05月 24日

確かに影響は受けてるんじゃないかと思います、キャラクターの配置など。個性豊かな姉たちの下で育った唯一の”男子”、純朴で素直な宗孝と、何をやらせても様になる名門貴族の御曹司、ちょいと底意地の悪いイケメン宣能の組み合わせには既視感が漂いますし。
でももっとライトでコミカルなものになっていました。
思いっきりネタバレしてしまうと、この本には四つの短編が収められていますが、”ホンモノ”の怪異は一つもありません。物の怪ではなく人の仕業なのです。しかしその背後にはなかなか複雑な人間模様、いわゆる政争というものが隠されていて、この部分はかなり読み応えがあります。しかも”鬼の仕業”でないことに毎度落胆しながらも、それを見抜く宣能の鋭い観察力は、かえって物語の構造がファンタジーに逃げていないだけに光るものがあります。ホームズ・ワトソンコンビのヴァリエーションとしては上々の部類でしょう。
となると、シリーズ化を望みたいところですね。
宗孝の強烈な姉たちの何人かは物語の中に出てきましたが、まだまだ語られていない人は大勢いますし、不思議な能力を持った宣能の妹、何やら企む(?)宣能の叔母やら曲者も揃っています。
はたして宣能は本当の怪異に遭遇出来るのか、あるいは宗孝は嫌々ながら直面してしまうのか、続きが読みたくなりますねえ。