『ゴジラで負けてスパイダーマンで勝つ/わがソニー・ピクチャーズ再生記』 野副正行
2013年 11月 17日
著者は1996年にSPE再建のために送り込まれ、2000年に去る時は共同社長に昇格していたという人で、ビジネス書とも映画業界の裏話本とも取れる内容ですが、結構知らない話も多くて面白かったです。

特に『007』の問題は当時かなり気になっていたので、そういう決着のつけ方だったとは今回初めて知りました。
これ、シリーズの1本『サンダーボール作戦』のみの映画化権を有し、かつてリメイク作『ネバーセイ・ネバーアゲイン』の製作を実現させたケビン・マックローリーが再度の映画化を目論んでSPEに持ち込んだことから始まります。このニュースは映画雑誌などでも大きく取り上げられ、リーアム・ニーソン主演、ローランド・エメリッヒ監督、と具体的な名前も取り沙汰されていました。
当然本家『007』シリーズを製作しているMGM/UAは面白い訳はなく、両社の間の訴訟問題に発展しますが、実際に裁判になればSPE側が有利だろうと言われてました。
しかし異なる二社で『007』シリーズを作り続けるのは得策ではなく、最終的にはSPEが映画化権を譲るということで落ち着いたのですが、その際に交換条件としてMGM/UAからSPEに譲られたのが『スパイダーマン』の映画化権だったというのは初耳でした。
『スパイダーマン』は三作作られ、今また新たな四部作(?)が進行するほどの大ヒットとなりましたが、皮肉なものでその後MGM/UAは経営が悪化し、現在では『007』シリーズはSPEから配給されているんですけどね…。
他にも『セブン・イヤーズ・イン・チベット』を配給したことでソニー・グループ全体と中国の関係が悪化し、その解消に向けた動きから『グリーン・デスティニー』のヒットに繋がったことなど、これまであまり知られていない興味深いネタが色々と出てきますので、業界ゴシップ好きにも受ける一冊なのでは…?