『赤×ピンク』(2014)
2014年 02月 25日
桜庭一樹の”初期傑作”と呼ばれる作品を坂本浩一監督が映画化!
出演は芳賀優里亜、多田あさみ、水崎綾女、小池里奈、山口祥行、前山剛久、杉原勇武、桃瀬美咲、桜木梨奈、三田真央、西野翔、周防ゆきこ、大島遥、安田聖愛、人見早苗、榊英雄、品川祐ら。
角川文庫創刊65周年記念作品、なんていう冠も付いてます。
六本木の廃校となった小学校では今夜も、性同一性障害に悩む空手家・皐月、SMの女王様ミーコら訳アリの女性たちがぶつかり合う非合法の格闘ショー”ガールズブラッド”が開かれていた。
そこへDV夫から逃げ出してきた人妻・千夏と内気なOL・まゆもメンバーに加わり、皐月と千夏は互いに惹かれあい、ミーコはまゆを妹のように可愛がるようになる。
だがそんな穏やかな日も長くは続かなかった。
空手一門を束ねる千夏の夫・安藤が彼女を連れ去り、まゆもまた彼女たちの下から去っていく。
更に安藤の画策によって”ガールズブラッド”は存亡の危機に陥ってしまう。
自分たちの居場所を、愛する人を取り戻すため、皐月とミーコ、そして仲間たちは今立ち上がる!
このところ『009ノ1/THE END OF THE BEGINNING』、『白魔女学園』と今ひとつ納得しきれない坂本監督作品が続いただけに、今度はどうなのかなあという不安も若干あったものの、見終わった後は完全に払拭されました。
芳賀優里亜が大胆フルヌードを披露!というのは今回の売りの一つですが、正直言って色々と誤魔化してるんじゃないのかなあと思ってました。
ところがドッコイ、冒頭から全裸シーンがあってビックリ。
しかもバストトップどころかヘアまで披露ということで、彼女の女優根性には敬服いたしました。
スレンダーながらメリハリのついたその肢体は、少年の心に少女の身体という皐月のキャラクターに、より説得力を与えています。
謎めいた人妻を演じた多田あさみは、打って変わって豊満なボディーの持ち主。
男を手玉に取る小悪魔的要素と成熟した大人の色香、その両方を兼ね備え、自分とは真逆なだけに皐月は千夏に惹かれたのかなと思わせてくれます。
ただ積極的に皐月をリードするという役どころでありながらその絡みのシーンは終始受け身で、後ろ姿でのオールヌードのショットは何度もありながら、バストトップは巧妙に隠し通し、夫にレイプされるシーンではカメラアングルに不自然さを感じてしまうのが残念でもあります。
水崎綾女は今回の儲け役、かつキーパーソン。
SMの女王様ということでボンデージファッションに身を包みながらも、素顔は面倒見の良い、人に気配りの出来るお姉さんキャラ。
冷静に皐月や千夏を観察する眼を持ちながら、一方で妹分のまゆが去った後茫然自失する脆さもあり、彼女の演技力の高さの一端を覗かせてくれます。
その主体性に乏しく周囲に流されるOLまゆを演じた小池里奈は、守ってあげたくなるいたいけな少女の顔と、ふとした瞬間に見せる別次元へトリップしたかのような表情のアンバランスさがゾクゾクさせるし、そのまゆに異常な執着ぶりを見せるのはグレムリン/ソラこと前山剛久。
彼の爽やかな好青年というのも見てみたいですが、それよりもこういう狂気をはらんだ役の方が本領を発揮できるのでしょうか。
強い女のイメージの強い人見早苗がチラリと見せたエロティシズムも酔わせてくれるし、何といっても弁解の余地ない榊英雄の悪辣っぷりに、あの黒リンの面影は皆無。ただ、最後はもっとコテンパンにやられてくれないと、見ている方の溜飲は下がらない…?
作劇上エロティックなシーンは比較的前半に集中し、後半は畳みかけるようなアクションの連続で、ボルテージは弥が上にも高まります。
アクション作品の経験者で本作でも大半のスタントを自らこなした水崎綾女のポテンシャルの高さも然ることながら、芳賀優里亜の身体能力の高さにも唸らされますし、期待していなかった多田あさみや小池里奈も十分に見せてくれます。
そしてメインの彼女たちだけじゃなく、他の”ガールズファイト”のメンバーの頑張りにも脱帽です。
個人的にはこの中で光っていたなと思うのは桃瀬美咲。
出番も4人以外の”ガールズファイト”メンバーの中では一番多く、キャラも立っていました。
坂本監督とは『獣電戦隊キョウリュウジャー/ガブリンチョ OF ミュージック』で既に組んでいますが、彼女もアクションをアピールポイントにしているだけに、ただのアイドルにはない存在感を示していました。
この作品で坂本監督は明らかに次の大きなステップへと駆け上った印象があります。
既に『獣電戦隊キョウリュウジャーVSゴーバスターズ/恐竜大決戦!さらば永遠の友よ』は公開済みで、続いて『キョウリュウジャー』を中心にした<スーパー戦隊>シリーズのOB&OGキャストで固めた作品が公開待機中ですが、次の次、更にその次と期待は益々高まっていきます。


五つ星評価で【★★★話は好きじゃないがアクションは燃える。映画としてのバランスは残念ながら悪い】 いろいろ思うところはあるが、アクションシーンの真剣さと そこに映 ...... more



作家性を求めると金子監督になり、好きなものを突き詰めると河崎監督になるのかな、と。
多分同じ素材・題材――例えばアイドル系の女優さんを使ったアクション映画を撮ったとしても、それだけの色合いの差が出るんじゃないかなあ。
まあ減点方式で行くと、この手の映画はキツいですね、どうしても。
『地球防衛未亡人』にしろ『ヌイグルマーZ』にしろ。