『里見八犬伝』
2014年 11月 09日
昨日は新国立劇場へ、鈴木哲也の脚本を深作健太が演出した舞台版「里見八犬伝」を観に行ってきた。
2年前に上演された時に興味を惹かれたものの、なかなか時間が取れなかったりで苦労しているうちにチケットを取り損ねて断念したという曰くつきのお芝居で、今回再演となり念願の観賞となった。

意図的なのか偶然なのか、昨今はヒーロー番組出身者が出演する舞台が増えている気がするが、これもそんな一本。それを差し引いても若手注目の男優が多数共演していることもあってか、客席の大半が女性客という異様な雰囲気だった。深作健太の父・深作欣二はかつて角川映画『里見八犬伝』を監督したが、その作品で犬飼現八を演じていたのが『バトルフィーバーJ』曙四郎=バトルケニアや『電子戦隊デンジマン』デンジブルー=青梅大五郎、そして初代『宇宙刑事ギャバン』こと一乗寺烈を演じた大葉健二で、今回は二代目ギャバンの石垣佑磨が現八役という不思議な縁がある。
ということで期待して観た芝居だったが、ストーリーの運びにはかなり落胆。
性格破綻者揃いの八犬士、伏姫の色香に惑わされ妻子を捨てたり、成長した我が子と剣を交えたいがために闇落ちして復活を遂げるなど、ただ己の欲望に忠実なだけの金碗大輔、正義の象徴どころか諸悪の権現である里見義実、濡れ衣を着せられた憐れな女・玉梓、一方的に任務を押し付けるだけでろくに事情も説明しようとせず、煙に巻くだけの無責任な伏姫……。
道節が捨てられた大輔の息子、玉梓が無実の罪で処刑された義実の正室で、その娘である伏姫を毛嫌いした義実が八房共々幽閉したなどの新解釈、新設定は面白いと思ったが、結局のところ何故この八人が選ばれたのか、それぞれが持つ珠に浮かび上がる文字の意味合いなど、納得出来る展開にはなり得ていない。
兄妹として育ちながら恋愛の情に溺れ、最愛の者を己が手にかけてしまう信乃や、玉梓側の一味に八犬士の一人がいる、というのは深作欣二監督版『里見八犬伝』(というより原作となった鎌田敏夫の小説『新・里見八犬伝』)と同工の趣向。ただあちらで寝返るのは道節ではなく、現八だが。
そして主演の山﨑賢人は終始気取った癖のある台詞回しで、聴いていて非常に耳障り。おまけにこれは演出の所為だろうが叫びっ放しで演技にメリハリがないので観ていて辛い。馬場良馬や荒井敦史も感情の起伏が激しいシーンがあるが、その前後で芝居を変えているからそれが活きてくるが、一本調子ではそれも無理。もう少し頑張って欲しかったところ。他のキャストが若手ながらそれなりに”出来る”メンバーだけに、余計それが目立ってしまう。
殺陣にしても丸山敦史や石垣佑磨、馬場良馬に村井良大など、横山一敏らを向こうに回して卒なくこなしているので総じて見応えはあるものの、期待が大きかった分だけ一本の舞台としてはかなり不満が残るものとなってしまった。
種々練り直し、キャストも交代させながらの再々演も望みたいところだ。

最後に音楽について一言。
いきなりワーグナーの「ジークフリートの葬送」が流れたのには驚いたが、それ以上に驚いたのが続けてOVA『ジャイアントロボ THE ANIMATION/地球が静止する日』の音楽が流れたこと!
音楽担当者としてクレジットされているのは天野正道なのだが、どうやらこの舞台のために作られた曲は一曲もなさそう。調べてみると初演の時も同じだったようで、聴き覚えのない曲もあったので『ジャイアントロボ』以外からの流用もある模様。
ビッグバジェットのプロジェクトで、何故このような事態になったのだろうか?
【ひとこと】
石垣佑磨の「南斗水鳥拳!」はアドリブ?