『ホビット/決戦のゆくえ』(2014)
2014年 12月 14日
そして物語は『ロード・オブ・ザ・リング』へ――。
色々な意味で感慨深いですね。
先ずは映画化が頓挫せず、無事ゴールまでたどり着いたことを。
もし全てが順調に行っていたならば、もう5年くらい早くこの日が迎えられていたかも知れません。
映画化の権利を巡る争い、ピーター・ジャクソン監督と映画会社との争い、原作著作権者と映画会社との争い、映画会社の経営悪化、スケジュールの遅れに伴うギルレモ・デル・トロからジャクソンへの監督交代劇…その道程は決して平坦ではありませんでした。
そしてビルボ・バギンズ、ガンダルフ、それにトーリン・オーケンシールド率いるドワーフ一行の旅路も、当初の二部作構想から結果三部作へ。
その旅がとうとう終わってしまい、様々な出会いと様々な別れがあり……
そのラストは<LOTR>三部作へと引き継がれていきますが、映画としてはこれで「中つ国」との決別となるわけで、約15年間、本当に愉しませて貰いました、有難うございます、という気持ちで一杯です。
さて、映画そのものは原作小説とは些か、というよりかなり趣の異なるものになっています。
これは先行する<LOTR>との整合性を取る上では必要なものだったのでしょう。
熱心な原作ファンからすると許しがたい改変かも知れませんが。
前作ラストではなれ山を飛び立ったスマウグは「湖の町」を襲い、ここでバルドが英雄の名に恥じない活躍を見せる……ものの、これがアバンタイトルに過ぎないという贅沢さ。
大言壮語している割にあっけない最期を遂げるスマウグですが、物語の主眼はおそらく一般観客の期待に反して竜退治にあるわけではありませんので、先へと進みます。
この後ははなれ山の財宝に執着し己を見失ってしまうトーリンの苦悩と、それを見守るビルボや他のドワーフたちの葛藤、更に宝に惹き付けられるかのように集まってくる町の人々、「闇の森」のエルフたちとの対立へと移り、ここでは原作以上にトーリンやビルボの心情が掘り下げられ人間ドラマが強調されていきます。
原作には登場しない息子レゴラスやオリジナルキャラクターである近衛隊長タウリエルとのやり取りを経て、「闇の森」のエルフ王スランドゥイルが極端な孤立主義者、融通の利かない”悪役”としての面ばかりが表に出ているのはやや気の毒ではありますが、人間側の代表バルドを際立たせるためにも致し方ないところでしょうか。
くろがね山のダイン参戦で事態は一気に緊迫。
ついにドワーフとエルフ&人間連合軍の戦端の幕が切って落とされようとしている正にその時に「穢れの王」アゾグ率いるオークの襲撃が起こり、ここに「五軍の戦」が始まります。
ここは映画ならではの迫力で<LOTR>もかくや、という激しい戦いが描かれます。
原作では殺伐さを嫌ったのでしょうか、主人公たるビルボは乱戦の最中に気を失い、事の次第をあとで知るのですが、映画では主人公らしく能動的に行動をします。
命がけの行動でトーリンの危機を知らせたことで、一度は決別したビルボとトーリンの別れがよりドラマティックなものになったのは確かでしょう。
「五軍の戦」ではレゴラスが超人的な働きを見せます。
またこの場面ではありませんが、窮地のガンダルフを救うため、ガラドリエル、エルロンド、それにサルマンまでもがアングマールの魔王らと戦うシーンも用意され弥が上にも冥王復活を印象付けていますが、他にもビルボがトーリンからミスリルを貰うシーン、レゴラスが父スランドゥイルから北へ行って「ストライダー」と呼ばれている男に会えと言われるシーン等々、<LOTR>への伏線は幾つも貼られています。
そして姿を見せる冥王サウロン。
果たしてサルマンはこの時点で既にサウロンと接触していたのでしょうか。
それとも…?
ラストシーンは予想通り現代へと戻り、ビルボの元をガンダルフが訪れるところで終わります。
これで第一作『思いがけない冒険』の冒頭部分、更に言えば<LOTR>の第一作『旅の仲間』の冒頭へとも繋がるようになっています。
この終わりを観てしまうと続けて<LOTR>を観たくなる衝動に駆られますが、はてさて時系列順に観るのが良いのか、それとも製作順に観る方が良いのでしょうか。
時系列順だと<LOTR>ラストで言いようのない哀しみに襲われてしまうし、製作順だとやはりモヤモヤが残ってしまうし……。
<スター・ウォーズ>も二つの三部作からなる物語(現在は更に三つめの三部作を製作中ですが)ですが、その整合性はこちらの方が遥かに上ですね。
<SW>は製作中断期間の長さと年代設定の所為もあって、同じキャラクターが出てきても違う役者が演じていたりで連続性が殆ど感じられないのが残念なんですよね。その点こちらはイアン・ホルムとマーティン・フリーマン演じるビルボがどうしても同一人物に見えないという点はさておき(老ビルボとしてイマン・ホルムも出演しているので良しとしましょう)、ガンダルフ、ガラドリエル、エルロンド、サルマン、レゴラス、フロド(ついでにゴラムも)がオリジナルキャストで、全員がほぼイメージ通りで再登場してくれますので、余計一体感が強まります。
勿論続けて両シリーズを観たならば、どうしても歳月の隔たりは感じることでしょうが。
来年の今頃にはこの『決戦のゆくえ』の<エクステンデッド・エディション>もリリースされているでしょうから、それが本当の「中つ国」の最終章?
『シルマリルの物語』や『終わらざりし物語』などトールキンの残した「中つ国」を舞台にした物語はまだありますが、いずれも映画としてまとめるには難しそうですし、製作サイドも権利を押さえてはいないようです。これでお別れとなるのでしょうか……。
最後、湖の町の統領はどうなったんでしょう?
あれで死んじゃった?
その腹心アルフリドは原作の統領の役割を担ったりで随分と優遇されてますが、<LOTR>の「蛇の舌」グリマとキャラクターが被っているような…。
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レビューを拝読しながら、昨日の余韻を楽しんでいます。
かつてはファンタジーを敬遠していたのに、LOTEからHobbitと、思いがけない楽しみをこれらの作品からもらいました。
私の方はなかなか感想をまとめられそうもありません。。。
今日は久しぶりに原作を読み返してみましたが、エクスカリバーさんも書いたおられるように、映画では人間ドラマが強調されてるのと、戦闘シーンがメインで描かれているといった印象でした。
オリジナルキャラクターのアルフリド、グリマと少しキャラかぶってる部分ありますね。
アルフリドの方が滑稽で、笑えましたけど(あの女装!)
もう一度映画館へ観に行くかどうかはわかりませんが、DVD&Blu-rayが出ればシリーズ全部を観直すのは必至。
特に『LOTR』との連続鑑賞は是非やりたいところで、最終的な評価はその時でも良いかな、と思っています。
PJ監督は『ホビット』→『LOTR』の順で観て欲しいようですが、六部作としての完成度は如何でしょうか。
これで「中つ国」の世界とはお別れかと思うと切ないですが、無事に最後まで作られて嬉しく、ラストでホビット庄の様子が見れるとホッとすると同時に切なさも感じたものです。
映画では色々とスルーされたまま終わってしまった事柄があるので、その辺はDVD化された時の追加シーンとして沢山楽しませてくれるのではと期待してます。
でもそれで本当の最後かと思うと寂しいですね。
『LOTR』とループするしかないのかなあ…(^-^;