『ロッキー』
2015年 11月 22日

最初のロッキーにはヒーローっぽさは皆無で、高利貸しの取り立て屋をやってるチンピラ。
永遠のヒロインのエイドリアンも、地味でブサイク。
お互いにお互いのどこに惹かれたのかはわからないけれど、この2人が映画の後半に差し掛かるにつれ段々と美男美女に見えてくるのは一種のムービー・マジック(エイドリアンが眼鏡を外す、というのもわかりやすいポイントだけど)。
自分勝手で我儘で癇癪持ちのポーリー、頑固オヤジでロッキーに唯一正面から苦言を呈することの出来るミッキー、対照的な2人ではあるけれど、どっちもちゃっかり勝ち馬に乗ろうとしている点では同じで、癖もあるけど味のある小市民ぶり。
こういったキャラクターに囲まれて庶民性が際立っているのもこの作品が支持された理由なんだろう。
ロッキーが雇われてる高利貸しも、何かとロッキーを気にかけ面倒を見てくれてる(時には師であるミッキー以上に)点では、決して単純な悪人には描かれておらず、むしろ表裏がない分好感が持てるようになっていて、つまりは街ぐるみでロッキーの味方をしているという図式が、いやでもファイトシーンを盛り立てる仕掛けになっているのだ。
映画は約2時間、そのうちロッキーの暮らしぶりを紹介し、チャンプとの対戦が決まるまでが1時間。
ここからクライマックスへ向けて一気に物語は収斂していくのかと思いきや、ポーリーやエイドリアン絡みで人間ドラマが入るのがややまだるっこしいし、そもそもロッキーとエイドリアンの接近が早すぎる気もしないでもないけれど、有名なテーマ曲”Gonna Fly Now”に乗せたトレーニングシーンが出てくると、映画は残り30分。否応なしに盛り上がってくる。
ロッキーとアポロの試合シーンは実は10分ちょっとしかなく、見ている間はそれこそ15ラウンド戦っているのを見ているくらいの充実感があるが、これは演出や編集の上手さ。
そして試合はロッキーが圧倒しているように見せながら(意図的?偶然?)も、判定は僅差でアポロ。
安易にロッキーに勝たせなかったのが映画としての勝因で、これでチャンプとしてのアポロの面子を立てつつハッピーエンドに仕立てることに成功している。
結果的にアポロが勝ったことで続編を作りやすくなっているが、試合後の「リターンマッチはなしだ」という2人のコメントは当時の製作サイドの本音なのかな?
<過去記事>
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