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『ロッキー6』

――に改題されるかと思いましたが、今でも「ロッキー・ザ・ファイナル」のままのシリーズ完結編。
といっても「3」と「5」に続く三度目の完結編であるし、今度は「クリード」という”新章”まで誕生したので、これからどういう扱いになるのかはよくわかりませんが…。

『ロッキー6』_e0033570_13170521.jpg今更ロッキーがリングに上がる?!という時点で「駄作確定」のレッテルを貼られてしまいそうなものだけれども、実はこの映画は結構好きです。
エイドリアンを喪い、息子ロバートとは疎遠、親友にして義兄のポーリーとは相変わらずつかず離れずの距離感を保ち、経営するレストランは繁盛しているようですが、街は変わってゆき寂寞感に囚われているロッキーの姿は、等身大のスタローン自身を投影しているようでリアルです。
また観ているこちらも段々とロッキーの年齢に近づいてきていることもあって、思い入れの度合いも強まってきているようです。

そんな中でロッキーの前に姿を見せた一人の女性、マリー。
彼女は第1作「ロッキー」にチラっとだけ登場した不良少女の成長した姿。
こういうキャラクターの使い方、スタローンは上手いですね。
同じく1作目の冒頭でちょこっと出てくるスパイダー・リコが同じ役者さんで再登場してきたり、元アポロのトレーナーだったデュークも何気にポーリーと共にシリーズ皆勤賞だったり。

その一方でエイドリアン役のタリア・シャイアからの出演申し出はきっぱりと断り、フラッシュバックなどで過去作品のフッテージを使い、出演者としてクレジットはしているものの新撮シーンは設けなかったため険悪な関係になったとも報じられたりしましたが、作品を観終った後だとスタローンの判断もわかります。
安易にエイドリアンを扱わない、徹底して描写しないことでかえってその存在感を浮き彫りにしようという魂胆だったのだな、と想像がつきます。

プロ復帰を果たしたロッキーの元へ、現役チャンピオンのディクソンからのエキシビジョンマッチの申し出があり、心が揺れます。ロッキーが考えていたのはそのような華々しい舞台ではなく、エイドリアンを喪った後の心の隙間を埋めてくれるようなちょっとした高揚感だったと思うのですが、そんなロッキーを後押ししたのはリトル・マリー。
これがエイドリアンだったらどうだったでしょうね。素直にロッキーを送り出したかどうか。
それを考えると今回のマリーの比重の高さは、実は(少なくてもシリーズ後半の)エイドリアンよりも大きいと言えるかも知れません。

『ロッキー6』_e0033570_23425227.jpg今回マリーを演じているのはジェラルディン・ヒューズという女優さん。ちょっとくたびれた感じがセクシーな、なかなかの美人さんです。
実は前作「5」の時にもマリーの再登場は予定されていて、しかも当時と同じジョディ・レティジアが配役されて撮影まで済んでいたもののカットされたのだとか。
スタローンの中でこのキャラクターは大きな存在だったのですね。

ディクソンが怪我をするというハンデを与えながら最終ラウンドまで戦い抜いたロッキー。判定では敗れはしたものの、これは妥当な結末でしょう。下手に勝ってしまっていれば…と思っていたら、実はロッキー勝利のヴァージョンも撮影されていてDVDやBlu-rayの特典映像で観ることが出来ます。
流石にご都合主義すぎますし、完結編として相応しいのは実際に採用された公開版だとは思いますが、判定のシーンを除くとロッキーが会場から去るシーンなどは殆ど同じ。つまり試合結果に関わらず、真の勝者はロッキーということは変わらないということでしょう。

エンドロール、フラデルフィア美術館の階段ではしゃぐファンたちの映像で構成されていて実に楽しそう。
そしてその後、一人佇むロッキーの後ろ姿、いいラストシーンです。


by odin2099 | 2015-12-26 13:18 |  映画感想<ワ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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