『Mr.ホームズ/名探偵最後の事件』(2015)
2016年 03月 22日
93歳になったホームズは海を臨む田舎町で、家政婦のマンロー夫人とその息子ロジャーと共にひっそりと暮らしている。聡明で、また自分を慕うロジャーをあたかも新たな助手とするかのように、ホームズは事件を振り返ろうとするのだが…。
親友ワトソンもハドソン夫人も既に亡く(過去のシーンで兄マイクロフトが出てくるが、後に死去したことが語られる)、老い――特に記憶障害と戦うシャーロック・ホームズの姿が、美しくはあってもどこか殺風景な田舎街の中で言いようのない寂蒔感を掻き立てる一篇。
未解決事件の謎解きに挑む姿よりも、誰よりも明晰な頭脳の持ち主だったシャーロックが、その知力の衰えと対峙し、如何に過去の記憶を呼び起こすのかというサスペンスの方が遥かに興味深い作品だった。
ワトソンとは別れたもののまだ颯爽たる姿を見せる過去(60代)のシャーロックと、年老いた今のシャーロック、イアン・マッケランのその演じ分けも見事で、大切なことを忘れてしまわないように身近なところに書き残したり、それでも思い出せない事柄について困惑する表情には身につまされる思い。
終盤が急転直下で、しかもラストシーンが甘すぎる気がすることを除けば極上の小品を味わった気分である。
だが、シャーロック・ホームズの映画を見た、という気持ちには到底なれなかった。





