『海底大陸』 海野十三
2016年 07月 05日
大英帝国の威信をかけて派遣されたスミス警部は、現場近くを航行中のフランス汽船ルゾン号へと乗り込み捜索を開始する。
やがて漂流中だった日本人のボーイ・三千夫少年を救出はしたものの、手掛かりは杳としてつかめない。
その時、鋼鉄製の怪物”鉄水母”がルゾン号へと近づいていた…!
人類と海底超人との一触即発の危機を描いたSFジュブナイルの古典。
この海底超人の正体は、実はかつて超文明を誇ったアトランティス大陸の末裔。大陸が沈んだのちに海底で不定形生物として生き延びていたという設定で、海上の調査のためにメリー号を拿捕していたことが明らかになる。
この海底超人たちの行動がかなり乱暴すぎるのだが、それに対して地上人たちもいきなり攻撃を仕掛けるなどかなりツッコミどころ満載。
その中でも海底超人の王子ロロー殿下は地上と友好的な関係を結びたいと考え単独で接触を図ってきたり、地上側でもいち早く海底超人の正体を看過した日本の宇宙学者・長良川博士や三千夫少年などコミュニケーションを取ろうとする人たちもいたりで、一応穏健派と過激派の対立なども描かれてはいるが、この件はそれほどの盛り上がりを見せないので多少のもどかしさを感じる部分だ。
そして最終章は「大団円」と名付けられてはいるものの、遂に両勢力は激突して大きな損害が出、しかも長良川博士や三千夫少年の消息も不明で終わってしまうというのはちょっと荒っぽすぎる。続編の構想でもあったのだろうか。
古典ということで割り引いて考えても、緻密さよりも勢いで突っ走り、幕引きをきちんとせずに走り抜けていってしまった印象。
ぶっちゃけ期待が大きかった分、失望も大きい。
ムードは好きなんだけれども。