『崇徳院を追いかけて』 鯨統一郎
2016年 07月 30日

しかし今回は従来の歴史を題材とした激論バトルを繰り広げる短編集ではなく、初の長編。
旅先でこの二人がガチの殺人事件に巻き込まれるという異色作。
むしろ「すべての美人は名探偵である」に始まる早乙女静香の単独主演シリーズ(といいつつ桜川東子とのコンビ作だし、「邪馬台国殺人紀行」「大阪城殺人紀行」は翁めぐみを加えた三人組の<歴女探偵の事件簿>シリーズになっているけれど)に雰囲気は近い。
また時系列的には2作目「新・世界の七不思議」と3作目「新・日本の七不思議」の間に位置し、あのいがみ合っていた早乙女静香と宮田六郎が何故ラブラブになったのか?
という曰くを描いたという点でも正に異色作だ。
異色と言えば、謎めいた宮田六郎の私生活の一端が明らかに。
実家は名古屋で、それなりに名の通った不動産会社の社長の息子。ということは生活には困ってないんだろうなあ。
それに意外に?女性にもてる。
ゲストの女性キャラクターが二人出てくるが、どちらとも満更ではない雰囲気になり、静香がそれに嫉妬する?一面も。
宮田六郎と早乙女静香、おの二人のやりとりだけでもニヤニヤしながら読めてしまうけれど、崇徳院の呪いと西行との関係や、怪しげな新興宗教にまつわるきな臭い動きとの結びつきが今一つピンとこないのがなんとも…。
早乙女静香は強烈なキャラクター故にどのようなシチュエーションにおいても活躍しそうだけれど、宮田六郎とのコンビに関しては短編集の方が持ち味を発揮するのかもしれない。
【ひとりごと】
未読の<作家六波羅一輝の推理>シリーズのゲストキャラが、この作品に登場してるらしい。
クロスオーバー化が進んでる?