『太陽の蓋』(2016)
2016年 08月 08日

それからの数日間、「原発」というモンスターと戦った人々を、迫真のドキュメンタリータッチで描いたポリティカルサスペンス。
震災発生から時系列を追って進められる2011年のパートと、2012年や2013年、即ち後日の取材部分のパートを時折挟み、「あの時」どうなっていたのかを鮮明に描き出している。
鍋島という新聞記者を主人公に、政府や電力会社とのやりとりは緊迫感溢れるノンフィクションの体裁で、またイチFの作業員や非難させられるその家族、それに留守宅で帰りを待つ鍋島の妻を、状況がわからず不安に駆られる一般市民の代表としてフィクションとして描いた骨太な力作。
流石に東電関係者は別だが、菅内閣総理大臣、枝野内閣官房長官、坂下官房副長官秘書官、寺田首相補佐官、福山内閣副官房長官ら政府関係者が実名で登場するのには驚かされる。
この物語に出てくることが全てではないだろうし、事実と違う部分もあろうし、中立公正な立場で描かれているのかどうかもわからないが、まだ記憶に新しいというかまだまだ風化させてはならない「あの時」をドラマとはいえ、きちんとまとめ得たということは十分に評価してよいと思う。
「まだ何も終わっていない」というラストの台詞が胸を打つ。
北村有起哉、三田村邦彦、袴田吉彦、大西信満、中村ゆり、郭智博、神尾佑、青山草太、菅原大吉ら比較的地味なキャスティングなのも功を奏している。
監督は佐藤太。

『シン・ゴジラ』から怪獣要素を取り除くとこの作品になるように思う。
あの作品に惹かれる人ならば、こちらも必見。
