『トリプルX』(2002)
2017年 02月 15日
ワルにはワルを――次にNSA(国家安全保障局)がスカウトした人材は、エクストリーム・スポーツの天才だった。
自分の罪を帳消しにするのと引き替えにシークレット・エージェントになった<トリプルX>ことザンダー・ケイジは、見事に敵組織への潜入に成功するが…。
「新種のシークレット・エージェント誕生!!」というコピーが付けられているが、スパイ・アクション物に変化球を投げ込んだところこれが見事に効を奏し、早々に続編製作が決定。
毒をもって毒を制する式の設定はそれほど斬新だとも思えないが(『ワイルド7』だって『スケバン刑事』だってそうだ)、あちらでは新鮮に受けとめられたのか。
この秋一番の超話題作!などと過度な期待を抱かなければ充分に楽しめる作品ではある。
映画は、前半が<トリプルX>がスカウトされ、スパイになることを承伏するまで。
後半は、正体がバレて脱出した後に、計画を止めるべく再度アジトへ突入するクライマックスが中心で、実は潜入捜査を行ってるパートが意外に少ない。
ヒロインとのちょっとしたラブ・ロマンスを含めて、もっとユーモアたっぷりに描いてくれても良かったのに、とも思う。
ユーモアといえば、満載されたアクション・シーンは凄いを通り越して、むしろバカバカしい。
飛行機からパラシュートで雪山へ降下、そのまま足につけたボードで、わざわざ爆弾を投げて起こした雪崩よりも早く滑り降りるなんざ、ただただ笑うしかない。
序盤からムチャクチャなパフォーマンスを見せて、<トリプルX>ってのはこんなヤツなんだよ、というのを見せているからとりあえず納得出来るシーンで、勿論計算ずくでやっているんだろう。
またヴィン・ディーゼルの面構えが、これまた説得力を持たせてくれている。
ただこの強烈な個性、他の作品では上手く活かされるだろうか。
「シュワルツェネッガーやスタローンの次の世代を担う」と期待は大きいようだが、これまでそう呼ばれたアクション派の俳優が何人いたのやら。数年後に、レンタル・ビデオ屋の片隅にまとめて置かれていないことを祈る。
ヒロインのアーシア・アルジェントは、前半のけだるそうな雰囲気と、一転して後半の精悍な表情の切換が頼もしく、脇のサミュエル・ジャクソンはすっかり「大作の顔」としての風格を漂わせていてマルなのだが、相手方が揃いも揃ってチンピラ風というのは迫力不足。
<トリプルX>のキャラには合っているんだけど、計画がどでかいだけにギャップが…。
それにしても非常にウルサイ映画。ガンガンにロックは流れるわ、爆発音は座席を揺るがすわ、ランディ・エデルマンの音楽はなんだかハンス・ジマー調だわ、見終わって席を立った時に「映画館のロビーってこんなに静かだったっけ」と感動してしまった。
――と、これは「しねま宝島」からの転載(一部改訂)。
この作品はソニー・ピクチャーズが「007」に対抗して作り上げたスパイアクション物で、スマッシュヒットを記録。
勢いに乗って続編(未見)を作ったものの、ヴィン・ディーゼルが降板したせいか失敗に終わり、第三弾は頓挫。
そうこうしているうちにソニー・ピクチャーズは「007」の権利を手に入れたので、シリーズは終了と思いきや、最近何故か復活。
本家「007」が主役の降板騒ぎがあったりで次回作のめどが立たないから、その合間にということで復活したのかな。
ということで見直してみたけれど、サミュエル・ジャクソン、今見るとニック・フューリーの原型だなあ、このキャラ。
それにザンダーの動機付けが少し弱い気もするけど、好き勝手やっててついでに世界の平和も護っちゃうというノリも悪くはない。