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『魔人ドラキュラ』(1931)

ユニバーサル映画がベラ・ルゴシを主演に迎えて製作した「ドラキュラ」映画で、ブラム・ストーカーの小説の正式な映画化作品としてはこれが最初になるらしい。
監督はトッド・ブラウニング、ヴァン・ヘルシング教授役にエドワード・ヴァン・スローン、ジョン・ハーカーにデヴィッド・マナーズ、ミナにヘレン・チャンドラー、レンフィールドにドワイト・フライほか。

『魔人ドラキュラ』(1931)_e0033570_20200737.jpgタイトルバックにいきなり「白鳥の湖」が流れるので驚くが、後は本編中に音楽は一切流れず(劇中音楽としてはチラっと流れるが)、ゆったりとしたテンポに俳優たちの大仰な演技、というのは今日の目で見るとかなり辛いものがある。
約四半世紀ぶりに見直してみたものの、歴史的意義は見出せても純粋に楽しめたとは言い難かった。

ただドラキュラのというか、吸血鬼のというか、その表現方法で興味深く感じたのは直接的な吸血シーンが描かれないこと。牙も見せず顔を近づけただけで終わってしまうのだ。
棺桶から出るシーンもなく、蓋が空いて手が出てきたと思ったら次のカットでは棺のそばに立っていたり、コウモリや狼に姿を変えることは暗示されてはいるものの、変身するショットは皆無。
鏡に映らなかったり、十字架を嫌う仕草はあっても「ドラキュラ=吸血鬼」は明確ではなく、ヘルシングの台詞でのみ説明しているのだ。

技術的にリアルに表現するのが困難だったのかもしれないし、幅広い観客層にアピールするために敢えて恐怖心を煽ったり残酷な描写を避けたのかもしれないが、観客に想像の余地を残していることで、逆にジワジワと浸透してくるという、こういった恐怖演出もありなのだなと感じさせてくれた。

現在ユニバーサルは<ダーク・ユニバース>というプロジェクトを展開中だが、いずれこの作品のリメイク(リブート)にお目にかかれる日も来るのだろう。


by odin2099 | 2017-07-14 20:23 |  映画感想<マ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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