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『海のトリトン』

アニメブームが起った頃、既に”幻の名作”扱い(一説には初めてファンクラブが作られたアニメ作品だったとも)だったTVアニメーションを、劇場用作品として再構成。
原作:手塚治虫、プロデューサー:西崎義展、監督:富野由悠季というビッグネーム揃い踏みを、後世のアニメ研究家たちはどう見るのだろうか。

『海のトリトン』_e0033570_09140253.jpg実際には手塚治虫は素材として『青いトリトン(後に改題)』を提供しただけ、西崎義展はまだ現場に大きく関与するに至らず、一方で富野由悠季は初の総監督作品として取り組み、原作を解体して事実上ほぼオリジナルストーリーを構築して仕切っていたようなので、三者のコラボレーションには程遠い現場だったようだが、非常に興味を惹かれる組み合わせであることは間違いない。
特に『宇宙戦艦ヤマト』と『機動戦士ガンダム』というアニメブームの中心を担った作品の、原点であることは疑いようがないだろう。

この映画版は『宇宙戦艦ヤマト』同様、西崎プロデューサーの指揮のもと舛田利雄監督らの手で再編集。
『宇宙戦艦ヤマト』、『さらば宇宙戦艦ヤマト』を一挙上映する<宇宙戦艦ヤマトフェスティバル>の目玉商品として作られた。
この企画はいわば西崎版<まんがまつり>で、本家<東映まんがまつり>を休止して上映された(地方都市など限定の特別プログラムとして<東映まんがまつり>そのものは公開された)。

そういった時間的制約から、当初は全27話を70分でまとめるという話があったものの、流石に無謀だと判断したのか、結局は前半部分だけをまとめることになったのは以前にも記した通り。
後半部分も同様にまとめられたが劇場公開には至らず、後年ソフト化される際に初めてお披露目となった。
前後編合わせて140分ほどの上映時間になるが、これは同じように半年分の放送をまとめた『宇宙戦艦ヤマト』劇場版とほぼ同じ。

『ヤマト』と違うのは、台詞・効果音・音楽を別々にした音声テープが存在せず、おまけに主役のトリトン役・塩屋翼が声変わりしてしまったために再アフレコ出来ないという事情のため、シーンの途中でBGMがブツブツ切れたり、原音カットの上でナレーション処理したシーンが存在すること。
それ故に映画としての完成度は今一つに感じられるのは残念。

ドラマは面白いし、鈴木宏昌の音楽も今日でも十分に通用すると思うので、オリジナル版を損なわない形でならリメイクしてみても面白そうだが、今作り直すとすると手塚原作に忠実なものを、という声も無視できないだろう。

<過去記事>
https://odin2099.exblog.jp/2852093/
https://odin2099.exblog.jp/17402009/


by odin2099 | 2018-06-24 09:23 |  映画感想<ア行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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