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『ミクロの決死圏』

人間を縮小して体内に送り込み、直接患部を手術する、という技術が実現するかどうかはわかりませんが、極小サイズの医療ロボットが開発され、それを遠隔操作するなり自己判断機能を組み込むなりして治癒させる、というのは将来的に実現しそうな気がします。
それでも実際に小さくなって、この目で人体を直接見てみたい、という研究者などはいるのでしょうね。
自分はミクロはおろかアントマンくらいのサイズでも小さくなりたいとは思いませんし、タイムリミットがあるなら例え難病だったとしても自分の体内に入れるのも躊躇しちゃいますが。

この映画の原題は”Fantastic Voyage”ですが、確かに幻想的な旅行ではあります。また「ミクロの決死圏」というのも意味不明な面は否定しませんが、それでも秀逸な邦題であろうと思います。この題名に落ち着くまでは紆余曲折あったようですが、少なくてもこれまでにはなかったジャンルの映画なので、苦労も多かったのでしょう。

『ミクロの決死圏』_e0033570_22013912.jpgお話もSF映画でありながら、東西冷戦下のスパイアクション物の要素が取り入れられています。要人を助け出すためのミッションですが、メンバーの中に敵側のスパイ、破壊工作員がいることが冒頭から示唆されています。
体内旅行の楽しみとは別に、それが誰かという興味でも引っ張っていきますが、これはその人物の言動(及び配役)を注意していれば、比較的早い段階で気付くのではないでしょうか。

SF映画として見ると、縮小されるプロセスを丁寧に説明し、かつきちんと「絵」として見せてくれるのが嬉しいところ。
乗り込む潜水艇は窓が多いデザインなので、浅瀬に潜る観光目的のものならいざ知らず、特殊なミッションに使用するには強度や耐久性の面でどうなのかなという気もしますが、そこは娯楽映画として割り切るところでしょう。

娯楽映画としての特徴は、何といっても乗組員の紅一点ラクウェル・ウェルチ
彼女だけ潜水服への着替えのシーンがありますし、他のメンバーは下にシャツを着ているのが見えますが、彼女は胸元をざっくり開けています。おまけに他のメンバーに比べ、明らかにサイズが違うピッチピチでボディラインを強調。それはカメラアングルにも反映されているような。

そして特筆すべきは潜水艇に絡みついた抗体を剥がすため、船外に出て作業するシーン。何故かその抗体は他の乗組員を差し置いて彼女の身体にのみビッチリと絡みつき、締め付けて行きます。
その時の彼女の苦しそうな表情とは裏腹に、彼女の身体から必死で抗体を剥がそうとする他のメンバーの表情がどこか嬉しそうに見えるのは気のせいでしょうか。
撮影中、彼女はスタッフ・キャストからかなりのセクハラを受けていたのでは?と心配になるくらいです。

ミクロ化していられる時間は60分ということで、この映画はタイムサスペンス物の妙味もあります。
彼らは時間内に妨害工作にめげず、未知の体内という空間でのアクシデントを回避し、見事にミッションを遂行できるのか。
丁度メンバーがミクロ化を完了し「あと60分だ」という台詞が出てくる頃、映画そのものも残り時間がほぼ60分なので、観客はリアルタイムでハラハラドキドキを愉しむことも出来ます。

ちなみにスパイとされる人物ですが、ラストシーンでそのことに何も触れていないのが若干気になります。
本当にスパイだったのか、それともストレスなどで精神に変調をきたしただけなのか、多少の疑う余地が残されているように思うのは考え過ぎでしょうか。

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by odin2099 | 2018-07-20 06:39 |  映画感想<マ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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