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『宇宙円盤大戦争』

一般的には『UFOロボ グレンダイザー』のパイロット版とされるこの作品だが、初めからこの作品をベースに『グレンダイザー』が企画されていたわけではない。
当初『グレートマジンガー』の後番組として予定されていたのは、兜甲児を主人公とする『ゴッドマジンガー』だったが(このタイトルは『グレート』の仮題にも使われ、後にシリーズとは無関係の別作品として発表された)、諸事情で企画変更され『グレンダイザー』が誕生したとのこと。
『グレンダイザー』で兜甲児がレギュラー入りしたのは、この『ゴッドマジンガー』企画の名残かもしれない。

この映画の凄いところは30分という尺のなかで、様々な要素を盛り込み、そして消化している点。
ロボットアニメブームと折からのUFO=空飛ぶ円盤ブームの融合によるアクション物としての新機軸。
デューク・フリード=宇門大介に織り込まれた変身ヒーロー物のテイスト。
戦火の中で繰り広げられる『ロミオとジュリエット』ばりの悲恋、そして戦争の哀しさ、虚しさ。
味付け程度ではあるが、核兵器への警鐘も含まれている。
そして男女間だけではなく、家族間の”愛”にも触れられており、それでいてそのメッセージ性は押しつけがましくはない。
演出(監督と同義)の芹川有吾の持ち味が全開になっている奇跡のような一篇だ。
勿論後に数々の作品に流用されることになる菊池俊輔の音楽の素晴らしさは言うに及ばず。
『宇宙円盤大戦争』_e0033570_18031976.jpg
ということで本作の主役メカはマジンガー系とは一味変わったデザイン。
ロボット形態のロボイザー、円盤形態のスペイザー(この名前は『グレンダイザー』でも踏襲)、その両者が合体したガッタイガーは、マジンガーの流れを汲むグレンダイザーの洗練された美しさとは対極に武骨で精悍なもの。
TVシリーズの主役を張るには(オモチャを売るには)些か厳しいかもしれないが、これはこれでアリ。
TV版と違い、熱血漢の主人公デューク・フリード=宇門大介も好きだ。

この大介が女心がまるでわからない朴念仁。
わざわざ地球まで追いかけてきたテロンナの恋心になんか思い至らないようだし、明らかに自分を慕ってくれている牧野ひかるも友達か妹くらいにしか思ってない様子。
テロンナはあからさまにひかるに対して嫉妬心を抱いているし、ひかるもテロンナと大介の間の何らかの関係を察して張り合おうとする意識が見える。
話をややこしくしてるのは大介なのだ。罪深い男だな。

この映画の公開日は昭和50年7月26日、つまり今日で43年になるそうな。
単独でソフト化されたり、TV等での放送、劇場等での再上映の機会に恵まれず、気軽に見られる状況にないのが残念でならない。

【ひとこと】
完全変形するガッタイガーの玩具も欲しいが、それよりもスターカーをどなたか商品化してくれないものか。
大介からデュークへの変身アイテムにして、光線を発射したり剣にもなるというデュークの武器でもあり、そしてガッタイガーのコントロールユニットでもある優れもの。デザインも好きなんだけどなあ。

<過去記事>
https://odin2099.exblog.jp/2526310/
https://odin2099.exblog.jp/22908199/


by odin2099 | 2018-07-26 18:09 |  映画感想<ア行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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