となるとその前日譚である「ホビットの冒険」の映画化にも期待が高まるのは当然ですが、権利関係のゴタゴタから実現するまで10年以上かかりました。
小説は「ホビットの冒険」が先に書かれ、その続編として「指輪物語」が誕生した訳ですが、映画は逆に<ロード・オブ・ザ・リング>三部作に寄せるように作られています。
この映画の発端部分は1作目の「ロード・オブ・ザ・リング(旅の仲間)」とリンクしており、どちらもビルボの誕生日から始まります。回想シーンを除けば、時系列上はこの「思いがけない冒険」の冒頭シーンの後に「旅の仲間」の冒頭部分が繋がるのです。
新作でありながら過去の話、というと<スター・ウォーズ・サーガ>を思い浮かべますが、あちらは一本一本が独立した作品として割り切って作られており、こちらはどちらから入っても大丈夫なように出来ている、といえば良いでしょうか。
冒頭部分には老ビルボとフロドが新規撮影で出てきますが、10年前のイメージを保っているのは流石です。まあ両作品を見比べてしまえば差は歴然ですが。
原作は翻訳の文体のせいもありますが、如何にも児童書というか牧歌的な雰囲気に包まれたものでしたが、この映画版は<ロード・オブ・ザ・リング>に寄せているので一大スペクタクル巨編といった趣き。映画オンリーの人は気にならないかもしれませんが、原作ファンには違和感多いかもしれません。
そのせいか<ロード・オブ・ザ・リング>ほどこの<ホビット>は絶賛の声が聞こえてきません。
エルロンド、ガラドリエルの奥方、サルマンらが登場し、原作にはないサウロン復活への伏線が張られるなど、自分もどちらかというと違和感を覚えたクチですが、逆に原作のトーンに忠実に作られれば映画版としての整合性が取りにくくなるでしょうから、これはアリだなと思っています。
それにしてもガンダルフの強引なやり口、これは何度見ても(というより原作小説読んだ時から)納得いかないのですが、それでいいんですかね。
勝手にビルボを巻き込んで何の説明も無しにドワーフを大挙して押しかけさせ、なし崩し的に冒険の旅へ誘う。納得いかないどころか、憤りさえ感じます。
自分がビルボの立場だったらブチ切れるだろうなあ。
そして白のサルマン。
権威を振りかざす目の曇った保守的な頑固者なのか、それともこの時既にサウロンの走狗になり果てていたのか、はたしてどちらだったのでしょう?
【ひとこと】
二人一役でビルボを演じるイアン・ホルムとマーティン・フリーマン。
顔立ちが全然違うので同一人物としては無理があるんですけれど。
<過去記事>