「機動戦士ガンダム」と「機動戦士Zガンダム」のミッシングリンクを埋めるOVAシリーズ「機動戦士ガンダム0083/STARDUST MEMORY」の総集編。
といってもこの作品が劇場公開された時、まだOVAシリーズは完結していなかった。物語の結末はOVAに先駆けてのお披露目となったし、細かい部分での差異も多い。

”一年戦争”終結から三年、テストパイロットとして配属されたコウ・ウラキは、その眼前で核弾頭を装備した試作型ガンダム2号機を強奪されてしまう。
試作型ガンダム1号機に乗って追撃するウラキだったが、相手はかつて”ソロモンの悪夢”の異名を取ったジオン軍のエースパイロット、アナベル・ガトーだった。ウラキはなすすべもなく、ガトーを取り逃がしてしまう。
全てはジオン残党を指揮するエギーユ・デラーズの企みだった。デラーズ率いる一派は”デラーズ・フリート”を称し、奪取したガンダム2号機を旗印に「ジオン独立戦争」の再開を高らかに宣言する。
「ガンダム」のOVAとしては先行して「機動戦士ガンダム0080/ポケットの中の戦争」が作られ、その好評を受けての第二弾という形だが、外伝的要素が強かった「0080」に対し、こちらは宇宙世紀の歴史にしっかりと根差した”正史”。「Zガンダム」に登場したジャミトフ・ハイマンやバスク・オム、更にはハマーン・カーンらも登場し、物語に厚みを加えている(プロデューサーは商売上の戦略からかアムロやシャアの登場をずっと示唆していたが、流石に出てこなかった)。
ウラキとガトーの間で揺れるヒロイン、ニナ・パープルトンは、OVAを見ていても揺れ幅が大きくて捉えにくいキャラクターだが、ダイジェスト版であるこの映画では一層その心理状態がわかりづらい。それにこの作品は戦争モノであると同時に政争モノでもあるので、限られた時間でその全てを理解しろというのは土台無理な話ではあるが、その一方で骨太な映画らしい映画になっているのも事実。OVAシリーズ(全13話)を見た上で作品世界を点描、そして「ガンダム世界」を俯瞰する手助けとしてこの映画版を見るのも良いと思う。
それにしてもアルビオンのクルーたちが、ティターンズ結成に伴ってその制服に袖を通すというラストシーンは恐ろしい。この作品におけるアルビオンは主人公の母艦、いわば”正義側”の象徴だが、「Zガンダム」におけるティターンズは物語構造上の”悪役”。知らず知らずのうちにキャラクターたちの立ち位置が代わっているのだ。この作品で主人公を助けた”良い仲間たち”は、次の作品の主人公によって”倒すべき敵”になっているのである。