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『D坂の殺人事件』(1998)

「屋根裏の散歩者」に続いて江戸川乱歩作品を実相寺昭雄が監督。
明智小五郎役は引き続き嶋田久作が務めている。

『D坂の殺人事件』(1998)_e0033570_19153280.jpg古本屋の女将・時子は美術品の修復を生業としている蕗屋清一郎を訪ね、伝説の責め絵師・大江春泥の「不知火」の贋作を依頼する。
見事にその期待に応えた蕗屋に、時子は更に幻の作品である「明烏」の贋作をも依頼する。
だが見本もない状態では流石の蕗屋も苦しみ、時子が用意したモデルを前にしても一枚も描けない。
が、ふと鏡に写ったモデルの衣装を着た自分の姿に閃き、見事に「明烏」を完成するのだった。

しかし完成した絵を届けに行った蕗屋は、春泥の絵のモデルが若かりし頃の時子自身だったことを知り衝撃を受ける。
そして時子が他殺体となって発見された。
第一発見者である古書店の従業員が容疑者として逮捕されるが、警察は今ひとつ確証が持てない。
そこで探偵事務所を営むことになった明智小五郎に声が掛るのだが…。

天才贋作家の倒錯的な人物像を真田広之が怪演。
物語のキーパーソンとなる古本屋の女将に吉行由実、それに岸部一徳、六平直政、寺田農、堀内正美、東野英心、広瀬昌亮、岡野進一郎、原知佐子といった個性的な面々や、実相寺組としてお馴染みの顔触れが並んでいる。
そしてモデル役の大家由祐子が初ヌードを披露。
倒錯的と言えば明智の助手である小林少年は女優の三輪ひとみが演じているが、ラストにはその小林芳雄が女装する(?)シーンもある。

最初から誰が犯人かは明らかになっているし、犯人像を絞り込む明智の推理も意外にあっさりしているので謎解きの妙味は味わえないが、その分真田広之ファンにはたまらない作品だろう。
ただただ真田広之の所作、佇まいを愉しむ作品と言い切っても良いかも知れない。
しかし「乱歩×実相寺」ということで、作られた瞬間からカルト化は必至。
見る人を選ぶ作品であることも間違いないところである。



by odin2099 | 2019-01-19 19:18 |  映画感想<タ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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