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『レッド・オクトーバーを追え!』

アメリカの眼前に突如出現したソ連の最新鋭潜水艦レッド・オクトーバー。米政府はその目的をアメリカ攻撃だと判断するが、CIA分析官(アナリスト)ジャック・ライアンは只一人、亡命の可能性を示唆する。
一方、ソ連軍は総力を挙げてレッド・オクトーバーを追跡している。攻撃か亡命か、決断に要する時間は残り少ない。
かくして大西洋は、米ソ入り乱れての戦場の場と化してゆく――というこのハイテク・サスペンスは、トム・クランシーのベストセラー小説の映画化。

『レッド・オクトーバーを追え!』_e0033570_20340679.jpg膨大な情報量をディティールの積み重ねで描写していくクランシーの小説は、実は映画化には適さないと思うのだが、本作は大胆な集約と独自の解釈によって骨太なドラマとなった。
それでも原作を知らないと辛い部分があるのは、原作の長さ(文庫本にして2冊分)からして致し方ないだろう。

原作との相違点(ライアンがラミウス艦長と面識があることや、重要な役回りであるイギリス海軍が登場しないことなど)はいくつかあるものの、そのいづれもストーリー運びをスムーズにさせているので、改悪とも言い切れない。

この作品を骨太に見せている要素は、勿論ジョン・マクティアナンの演出力もあるのだが、ここでは二人の漢(おとこ)の名を挙げておこう。

先ずはレッド・オクトーバー艦長マルコ・ラミウスを演じるショーン・コネリー。年齢を重ね渋くなってからのコネリーは実に魅力的だ。
ロシア人役としては無理があるが(ロシア語も喋らない)、原作以上に魅力的な人物像を創り出している。
当初クラウス・マリア・ブランダウアーでクランク・インしたものの変更。正確な理由はわからないが、これは正解だった。

一方、コネリー絶賛の陰でやや損をしてしまった感のあるのが、ジャック・ライアン役のアレック・ボールドウィン
ハリソン・フォードも候補に挙がっていたライアン役だが、CIAのアナリストという知的な役柄、家庭を大事にする一般人というイメージにはボールドウィンの方が適役だ。
せっかくのシリーズ・キャラクターでありながらも、これ一作で降板してしまったのが惜しまれる。

更にサム・ニールやスコット・グレン、ジェームズ・アール・ジョーンズらが脇を固め、ベイジル・ポールドゥーリスの重厚な音楽がこれを盛り立てる。
殆ど女性の登場しない映画だけに華やかさとは無縁に思われるが、この漢たちのアンサンブル。これこそ紛れもない「華」なのである。

以上が「しねま宝島」からの転載部分。
テレビで放送する度についつい見てしまう作品だが、最近は地上波もさることながら衛星放送でもなかなかお呼びがかからないようで、見直すのもちょっと久しぶり。

現在公開中の「ハンターキラー/潜航せよ」も潜水艦を巡っての米露のポリティカルサスペンスだが、その元祖格といえるのがこの作品。こちらはクーデターではなく亡命だが(クーデター絡みなのは「クリムゾン・タイド」の方だ)、虚々実々の駆け引きが愉しめる緊迫感溢れるアクション作品になっている点は同じだ。

ジャック・ライアンはシリーズキャラクターとして5本の映画が作られ、今もネット配信ドラマが製作されているが、その映像化作品群は一貫性に乏しいのが残念だ。

<過去記事>



Commented by 久保田 at 2019-04-17 14:16 x
2、3週間くらい前にBSで見ました。
今、見ても面白い作品ですよね。
どの役者も渋くて良いですし、潜水艦がジャンプするシーンなど見所がたくさんあって好きな作品です。
Commented by odin2099 at 2019-04-17 23:07
> 久保田さん

コメント、さんくす。

そうか、BSでやってたのか…。
ここのところBSノーチェックだったもので、見たかった作品色々と見逃してるなあ。
「キング・オブ・デストロイヤー/コナンPART2」とかDVDに吹替未搭載だから、吹替版の放送は貴重だったのに…!

それはさておき、もう30年近く前の作品なんですが、色褪せませんね。
アレック・ボールドウィンは随分と変わっちゃいましたけど(^^;

サントラ盤も相変わらずの愛聴盤です。
by odin2099 | 2019-04-16 20:50 |  映画感想<ラ行> | Trackback | Comments(2)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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