**** ネタバレ注意! ****
2008年の『アイアンマン』から始まった<マーベル・シネマティック・ユニバース>の通算22作目、<フェイズ3>としては10作目、そして<インフィニティ・サーガ>の完結編。
……のはずだったが、最近のケヴィン・ファイギの発言によれば<フェイズ3>の締めくくりは次回作『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』とのこと。
ただ実質的には長大なる物語の”完結編”たるに相応しい堂々たる大作である。
二回見てきて、ようやく少し感情の整理がついた。

最初に描かれるのは家族と静かに暮らすホークアイ、クリント・バートン。
しかし目を離した僅かな隙に、家族の姿は掻き消えてしまっていた。
一方、宇宙を漂流するアイアンマン=トニー・スタークとネビュラを乗せた宇宙船だったが、燃料も酸素も底を尽き、トニーは既に死を覚悟していた。
やがてその宇宙船はやがて眩い光に包まれる。
トニーとネビュラを救い出したキャプテン・マーベル=キャロル・ダンヴァースは、アベンジャーズ基地で生き残ったキャプテン・アメリカ=スティーブ・ロジャース、ソー、ブラック・ウィドウ=ナターシャ・ロマノフ、ウォーマシン=ジェームズ・ローズ、ロケット、ハルク=ブルース・バナーと合流を果たす。
だがトニーとスティーブの蟠りはまだ消えていなかった。
トニーは出迎えたペッパー・ポッツと共に基地を去る。
軟禁状態だった彼は未曾有の危機も知らず家族と水入らずの生活を送っていたが、そこでサノスのスナップによって家族を失ってしまう。
宇宙に取り残されたトニーとネヴュラの運命は?とヤキモキさせられたが、序盤であっさりと救出されて一安心。
ここでキャプテン・マーベルを紹介するのも悪くない。
『キャプテン・マーベル』のポストクレジットシーンでは、スティーブたちの前に突然姿を現すキャロルというシーンがあったが、本編にはなし。
ということは地球への帰還途中でたまたまトニーたちを見つけたわけではなく、スティーブらの依頼を受けて捜索に行っていた、ということだろうか。
また『インフィニティ・ウォー』の序盤では、スティーブと決裂したことを後悔し、反省しているように見えたトニーだったが、ここは敗れたことによって気持ちが高ぶっていたのだろう。
八つ当たりに近い形ではあるが、スティーブに感情をぶつけるトニーは、らしいといえばらしい。
キャロルとネビュラの発案によりサノスの居所を突き止め、ストーンを奪う計画が立てられる。
だが対峙した時、既にサノスは役目を果たした為にストーンは不要だとして破壊してしまっていた。
ソーは激情にかられサノスに止めを刺すが、遅きに失していたのである。
サノスがあまりにもあっさりと殺されてしまうので、一瞬呆然と。
もちろんここで終るわけはないからさてどうなるかと思っていると、当然のように後半でラスボスらしい存在感で復活してくる。
5年後、オコエも含め生き残ったメンバーたちは手掛かりを求めていた。
その中にはクリントのものと思われる凶行も含まれており、胸を痛めるナターシャ。
そんな時アベンジャーズ基地に、サノスの犠牲になったと思われていたアントマン=スコット・ラングが現れた。
そしてスコットはこの5年間が体感時間は5時間だったことを引き合いに出し、この技術を応用すれば過去へ戻ってサノスより先にストーンを手に入れ、失われた仲間を取り戻せるのではないか、と提案する。
スティーブ、ナターシャ、スコットは協力を求めトニーの元を訪れる。
トニーはペッパーと結婚し今は一人娘モーガンを設けていた。
スコットの提案に興味を示しはしたものの、今の自分にはリスクが大きいと参加の申し出を拒否する。
そこで今度はブルースを訪ねるのだが、今の彼は更なる実験の結果ハルクとの融合が進み、ハルクの姿でブルースの心を保っている状態だった。
自分の専門外でもあり一度は躊躇するものの、結局彼は計画への参加を表明し、実験が開始された。
実験は失敗が続き計画実行が危ぶまれたが、そこにトニーが合流。
スティーブとトニーは固い握手を交わす。
厭世気分に浸っていたソー、更にナターシャの説得によりクリントも参加し遂に実験は成功する。
そこで効率よくストーンを集めるため、チームを幾つかに分け別々の時代、場所へ飛ぶことになった。
ハルクが子どもたちの人気者になっているという設定は意外だったが、もっと驚かされたのがソー。
ノルウエーにニュー・アスガルドという街(村?)を作り、そこに生き残ったアスガルド人たちと暮らしている(『インフィニティ・ウォー』では消息不明だったヴァルキリーもそこにいる)のだが、ソーは小屋に引きこもり、コーグやミークと一緒に酒をかっ食らってゲーム三昧。
そして見るも無残なメタボ体型に。
これ、さすがに最終決戦までには元に戻るのだろうと思っていたが、ラストシーンまでこのまんまだったのには二度ビックリ。
かつて自身も酒に溺れて現実逃避していたヴァルキリーが、一切ソーを責めるようなことを言わないのも「わかってる」。
また家族を失い自暴自棄になっているクリントは、闇の処刑人となりヤクザの抗争に首を突っ込むまでになっているが、それを迎えに来たナターシャは責めることをせず、「もっと早く来てあげられれば良かった」と呟いてそっと手を握るのも、二人の長年の絆の深さが感じられる良いシーンになっている。
このシーンは東京という設定で、対するヤクザは真田広之が演じているが、正直言うと特に注目すべきものではなかった(殺陣はさすがだったが)。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をはじめ、様々なタイムマシン、タイムトラベルを扱った映画を上げ、全部でたらめだというシーンがあるが、この作品では一時的にストーンを借りても、また元の時間・元の場所へ戻せば「なくなったこと」にはならないから歴史は変わらない、ということらしい。
また今の自分が過去へ行って行うことは、自分にとってはこれから起こること(=未来のこと)だから、やはりタイムパラドックスは起らないと説明されるが、この辺の理屈はなかなか難しい。
2012年のニューヨークにはスティーブ、トニー、スコット、ブルース。
そこで二手に分かれブルースはエンシェント・ワンの元へ。
彼女はブルースの正体と目的を見抜き、ここでタイムストーンを手放せばこの世界が危機に陥ると主張するが、ブルースは根気よく説得する。
その決め手となったのは、未来を垣間見たドクター・スティーブン・ストレンジが、自らストーンを手放したという話だった。
「ストレンジに会いに来た」というブルースに対し、「5年程早すぎましたね」と返すエンシェント・ワン。
彼女はいずれストレンジが自分の元へやって来て、偉大な魔術師になることをこの時点で察していたということか。
そしてストレンジの判断が正しいのか、自分の判断が正しいのかを瞬時に見極め、ブルースにストーンを託すエンシェント・ワンの決断力。
それにしても、後付ではあるもののニューヨーク決戦の裏側でエンシェント・ワンも人知れずチタウリの軍勢と戦っていたというのは燃えるものがある。
一方のスティーブ、トニー、スコットは、スタークタワーから捉えたロキをシールド本部へ護送する最中のメンバーからマインド・ストーンとスペースストーンを手に入れるのだが、予期せぬハプニングが起りそのドサクサでロキがスペース・ストーンを持ったまま逃走、計画は失敗に終わる。
ロキの持っていたマインド・ストーンとスペース・ストーンを回収に向かったのが、ジャスパー・シットウェルとブロック・ラムロウ率いるストライクチームで、更にそれを指揮していたのがアレクサンダー・ピアースというのには驚いた。
またこの時代の本物と入れ替わったスティーブが、疑念を持ったエージェント・シットウェルの耳元に「ハイル・ヒドラ」と囁くシーンには唸らされた。
そして鉢合わせする2人のスティーブ(この時代のスティーブが、未来のスティーブをロキの変装だと思い込むのも良い)の戦い。
劣勢に立たされた未来のスティーブが「バッキーはまだ生きている」と告げて動揺を誘い、難を逃れるのも芸が細かい。
ただこの時に実は歴史上の分岐が起ってしまい、ロキがスペース・ストーンを持って逃亡中の新たな世界が出来てしまった。
これは製作が発表されたロキを主人公とする配信ドラマへと繋がっていくのかもしれない。
あるいは将来、別の時間軸からひょっこりと”正史”の世界へカムバックする、なんてことも?
またシットウェルたちが、キャップを自分たちの味方だと思い込んでる世界というのもなかなかにややこしい。
ローディ、ネビュラ、クリント、ナターシャを乗せた宇宙船は2014年の惑星モラグへ。
ここでスターロードことピーター・クイルを出し抜いてパワー・ストーンを手に入れようというのだ。
二人を下ろし、クリントとナターシャは更に惑星ヴォーミアへ向かう。
ソーとロケットは2013年のアスガルドへ。
エーテル(リアリティ・ストーン)を体内に吸収してしまったジェーン・フォスターから回収しようというのだが、その日は母フリッガが非業の死を遂げる日でもあった。
ロケットはリアリティ・ストーンの回収を成功させ、ソーは母とのつかの間の再会を果たし、失われたムジョルニアも取り戻す。
フリッガは一目見てソーが自分の知ってるソーではなく、未来から来たこと、そして必死に何かを伝えようとする態度に、やがて自分を待ち受けるであろう将来を悟る。ここでソーが神様でもヒーローでもない、ありのままの無防備な自分をさらけ出すことが、最後の決断に繋がるとは。
トニーとスティーブは、一発逆転を狙って今度は1970年へ飛ぶ。
この時代のキャンプ・リーハイ(キャプテン・アメリカ誕生の地)ではトニーの父ハワード・スタークとハンク・ピムが共に働いていた。
二人は無事にスペース・ストーンと、タイムトラベルに必要なピム粒子を手に入れ、トニーは妻が妊娠中だというハワードと、スティーブは最愛の人ペギー・カーターと邂逅する。
それをある意味でやり直す機会がここで突然訪れたのだ。
そしてスティーブはペギーの姿を垣間見る。
これがそれぞれの最後の決断へと繋がってゆく。
ちなみにテレビドラマや配信ドラマとの接点がなかなか描かれない劇場版だが、ドラマ『エージェント・カーター』に出てきたハワードの執事エドウィン・ジャービスが、このシーンに出ているのはさり気ないサプライズ。
モラグではローディがパワー・ストーンを手に入れた(このシーンは
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のセルフリメイク)ものの、この時代のネビュラと未来から来たネビュラがシンクロしてしまい、サノスがアベンジャーズの計画を知ってしまう。
父サノスの信頼を得るため、ネビュラは計画を妨害する任務に立ち、この時代のガモーラも妹に同行することに。
ヴォーミアでクリントとナターシャを出迎えたのはレッドスカル。
愛する人を失わない限り、ソウルストーンは手に入らないとの言葉に、二人に動揺が走る。
そして二人が、対象となる人物が異なるものの同じ結論に達した時、逸早く行動に移したのはナターシャだった。
悲しみの中、クリントの手にはソウルストーンが握られていた。
<フェイズ4>の製作予定にブラック・ウィドウを主人公にした作品があり、監督や出演者の情報が続々と流れてくる中、まさか死にはしないと思っていたナターシャのまさかの退場(映画は彼女のオリジンストーリーを語るものとも伝えられている)。
思えば彼女は冷静に状況を見極め、時に冷徹な判断を下し、そしてスティーブやブルースら誰かを鼓舞し続けるキャラクターだった。
クリントも今回彼女に救われ再生。
しかし彼女は二度と戻らない。
ナターシャの尊い犠牲を経てようやく6つのストーンを揃えたアベンジャーズは、ガントレットを作りこれを作動させる。
するとクリントのスマートフォンに妻からの着信が。
計画は成功したのだ。
だがそこへサノスの宇宙船が飛来、アベンジャーズ基地は全滅する。
ガントレットを作動させるにあたっては、何かをやらせてくれと懇願するソーに対し、ブルースが冷静に対応し自ら行う。
だが未来の自分と入れ替わっていたネヴュラの策略により、2014年のサノスの軍勢が押し寄せてくる、ということでサノスが再登場。
これまでのサノスの行動は自分なりに善を成そうという信念に基づいたものだったが、ここで初めて自分の楽しみのため地球を攻撃する。
言ってみればここで彼は単なる、そして倒すべき悪の首魁と化したのである。
キャップ、アイアンマン、ソー、ハルク、アントマン、ホークアイ、ウォーマシン、ロケットたちの決死の戦いが始まったが、サノスの率いる大群の前には多勢に無勢。その時、スティーブの耳に懐かしいファルコン=サム・ウィルソンの声が…!
ドクター・ストレンジが、スパイダーマン=ピーター・パーカーが、ブラックパンサー=ティ・チャラが、シュリが、エムバクが、ウィンター・ソルジャー=バッキー・バーンズが、スターロード、ドラックス、グルート、マンティスが、スカーレット・ウィッチ=ワンダ・マキシモフが、ワスプ=ホープ・ヴァン・ダインが、それにオコエとヴァルキリー、寝返ったガモーラにネヴュラ、ペッパーにワカンダ軍、アスガルド軍が駆け付けたのだ。
スティーブが叫ぶ「アベンジャーズ・アッセンブル!」
…と勢いでストーリーを書いてきてしまったが、約3時間の上映時間の内、ここまでで概ね2時間半。
この戦いの前段階では、アイアンマン、キャップ、ソーが中心となってサノスとの激戦を繰り広げるが、その中で一番燃えるシチュエーションは、遂にキャップがムジョルニアをかざすシーンだろう。
その時に高潔な魂は既に選ばれていたのだろうが、過去のアスガルドからわざわざソーが回収してきたのはこのシチュエーションの為だったのだとわかる(この前まではソーがストームブレイカーと二刀流?でサノスと戦っていた)。
ファルコンがキャップに「左を見ろ」というのは『ウィンターソルジャー』の時の「左、失礼」を受けてのものだろうし、ピーターが再会したトニーに早口でまくしたてるのもそれらしい。
ピーターの説明によると、スナップで消えた後は死んだわけではなく気絶状態だったようだ。
どこか別の次元か空間に飛ばされていたのだろうか。
量子空間に閉じ込められた結果、5年の時間を飛び越えたスコットと似たような経験をしていたのかもしれない。
そして5年間の記憶は誰も持っていないが、ただ一人未来を垣間見たストレンジだけが全てを把握していた、ということらしい。
そのストレンジにトニーが「これが勝利のチャンスか?」と尋ねるが、「何が起るか明かせば実現しない可能性があった」と答える。
これ、最後まで見るとかなり重い言葉だったことがわかる。
そしてそれを伝えられないことで、ストレンジなりに苦悩や葛藤があったことも察せられる。
アベンジャーズとサノスによるインフィニティ・ストーンの争奪戦が始まるが、ここでストーンをはめたガントレットを持って逃げるのが最初はホークアイ、そしてブラックパンサー、スパイダーマン、最後がキャプテンマーベルという新顔たちにリレーされていくのがニクイ。
またスパイダーマンのピンチに駆けつけるのがスーツに身を纏ったペッパーをはじめ、スカーレット・ウィッチやオコエ、ヴァルキリー、ガモーラ、ネヴュラら女性戦士ばかりというのも新鮮である。
遂にサノスがガントレットを手に入れ再びスナップ。
だが何も起こらない。
全てのストーンは間一髪抜き取られ、トニーの手にあったのだ。
そして「私がアイアンマンだ」と高らかに宣言しスナップ、サノス軍はちりと消えた。
ストレンジが見た、たった一つの勝利の方法は、トニー・スタークが自らを犠牲にすることだった。
先に書いたように、これしか勝つ手段がないと知った時のストレンジは何を思ったのか。
おそらく他の方法も模索したのであろう。
もしかするとこのルートは比較的早い段階で見つかったものの、それを伝えるわけにもいかず、結果14,000,605通りもの未来を見る羽目になったのではないか。
トニーがサノスからストーンを奪ってスナップする直前の、ストレンジと目と目の会話の雄弁さ。
トニーに駆け寄るのはローディ、ピーター・パーカー、そしてペッパー。
まずフライデーを通してトニーの身体の状態を確かめた後、自分の方を向かせて「ゆっくり眠りなさい」というペッパーにグッとくる。
ああ、あの『アイアンマン』から11年経つのだな。
クリントと家族の再会、ワカンダでのティ・チャラ、シュリとラモンド女王との再会、ピーター・パーカーとネッドとの再会、スコットとホープ、キャシーの再会…。
「ナターシャにも見せたかった。勝ったぞって」「きっと二人とも見てるわよ」というクリントとワンダのやりとり。
ストーンを使っても、ストーン以外の方法で消えた者は戻らない。
ロキも、ヘイムダルも、ガモーラも、ヴィジョンも、そしてナターシャも。
ガモーラに関しては、2014年世界からやってきたガモーラはどうやらそのまま留まっているようで、今後の再登場も期待できるが、ただピーター・クイルとのことは知らないわけで、二人が再び恋に落ちるのかどうかは製作予定の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』でのお楽しみということになるのだろう。
湖畔のトニーのログハウスでは、しめやかに葬儀が行われていた。
参列者はペッパー、モーガン・スターク、ハッピー・ホーガン、スティーブ、ローディ、バッキー、サム、クリント、ワンダ、ブルース、ピーター・パーカー、メイ・パーカー、ソー、ヴァルキリー、スティーブン、ウォン、スコット、ホープ、ハンク・ピム、ジャネット・ヴァン・ダイン、ティ・チャラ、シュリ、オコエ、ピーター・クイル、ロケット、グルート、ドラックス、マンティス、ネヴュラ、キャロル、サディアス・ロス、ハーレー・キーナー、マリア・ヒル、そしてニック・フューリー。
トニーほどの著名人であればもっと盛大な葬儀が営まれそうなものだが、いわば身内同然の仲間たちばかりというのが逆に嬉しい。
しかしここで
『アイアンマン3』に出てきたハーレー少年(というよりもう立派なイケメンに成長しているが)が出てきたということは、今後の作品群の中で彼が二代目アイアンマンを継ぐ可能性もあるのだろうか。
以前から実しやかに噂は流れていたが。
それともトニーとペッパーの娘モーガンが、いずれ父に代わってスーツを身に纏う日が来るのだろうか。
全てを終わらせるためにスティーブは過去へ飛ぶ。
ストーン(とムジョルニア)を元の世界、元の場所に正確に戻す必要があるのだ。
向こうの世界に例え何年いても、戻ってくるのは5秒後だと告げるブルース。
そして5秒後、スティーブの姿はそこになかった。
湖畔のベンチにかける男の姿を見つけたバッキーは、サムを促す。
駆け寄ったサムが見たのは、年齢を重ねたスティーブの姿。
全てのストーンを返し終わった後、ふと自分の人生を生きてみるのも悪くないと考えたスティーブは、過去に留まったのだ。
そして「これは君のだ」と楯をサムに託す。
そのスティーブの左手の薬指には結婚指輪が。
過去へ経つ前のスティーブとバッキーの会話は、明らかに永の別れを前提にしたものだ。
スティーブがこれから何をしようとしているのか、バッキーにはわかっていたのに違いない。
そしてソーはアスガルドの玉座をヴァルキーに任せ、ピーター・クイル、ロケット、ドラックス、グルート、マンティス、ネヴュラと共に旅立つ。
自己中心的だったトニーは家族を仲間を護るために自らを犠牲にし、他人に尽くしてきたスティーブは自分の人生を取り戻して生き、人々の範たれと自分に言い聞かせてきたソーはありのままの姿をさらけ出し、病気を治療するようにハルクを消し去ろうとしてきたブルースはハルクのままでいることを選択。
ユニバース立ち上げの貢献者たちは、物語の終わりに全て変わった。
見事な幕引きだったと言えよう。
これからの<MCU>世界はどうなっていくのだろう?
弓の才能の片りんを見せたクリントの娘がやがてホークアイの名を継ぐのか、ティーンに成長したキャシーはやはり父と同じようにアントマンになるのか。
そして5年の空白があるピーター・パーカー、同級生は皆卒業してしまっているのか?(これに関しては、どうやらネッドらはピーター同様に消えていたということで、そのまま同級生ということでいくらしいが)
今のところ『ブラック・ウィドウ』以降は『エターナルズ』と『シャン・チー』という新たなヒーロー物が準備中で、その後には『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』と「ドクター・ストレンジ2』、『ブラックパンサー2』が予定されており、また当然『X-MEN』と『ファンタスティック・フォー』のリブート作品も絡んでくることになるのだから、まだまだ当分終わらない。
今回が<インフィニティ・サーガ>の完結編、第一部終了という言葉を胸に刻んで、次を愉しみに待ちたい。
それにしても結局テレビや配信ドラマとはきちんと絡まないままで終わってしまった。
デアデビルやデイジー、それにフィル・コールソンあたりがモブでもいいから出て来れば盛り上がったろうに。
それにナキアやエヴェレット・ロス、セルヴィグ、シャロン・カーター、レディ・シフなどこれまでのシリーズを彩ったキャラクターで、もう何人か顔出して欲しい人もいたが、それでもロバート・レッドフォード、マイケル・ダグラス、レネ・ルッソ、ミシェル・ファイファー、アンジェラ・バセット、ナタリー・ポートマン、マリサ・トメイ、ウィリアム・ハートらを台詞なしか、あっても二言三言、映るのも数秒から数十秒といった出番でも起用できるのだから贅沢な作品である。
【ひとこと】
恒例となるポストクレジットシーンはなし。
ただしエンドロールの後で、1作目の
『アイアンマン』でトニーがアイアンマン・スーツを作っていた時と同じと思しい金属音が聞こえてくる。
新たな何かが誕生することを期待させる音だ。
【もうひとこと】
今回のガモーラの例を引き合いに出すまでもなく、時間を操作することで過去世界からトニーやナターシャを連れてくることは出来る。
だが、そこまでやるかな?
スティーブに関しては、前線で戦うことはなくともメンバーに助言を与えるような立場でのゲスト出演ということなら可能性あり?
ソーはこの終わり方からすると『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』に出てきそうだが、ロバート・ダウニーJr.もクリス・エヴァンスもクリス・ヘムズワースも、この作品をもって卒業の意向を固めているのでどうなることやら。