
誕生日の前日、母親から叔母のチィが経営する骨董屋への用を頼まれたアカネ。
そこへ店の地下室から突然、錬金術師ヒポクラテスとその弟子のピポが姿を現した。
私たちの世界を救って欲しいと頼まれるアカネだが、自分に自信の持てない彼女は断る。
しかし好奇心旺盛で自由奔放なチィはすっかり乗り気。
二人は地下室を通って不思議な世界へと旅立ってゆく。
柏葉幸子の『地下室からのふしぎな旅』を原恵一が監督。
脚本は丸尾みほ。
声の出演は松岡茉優、杏、麻生久美子、東山奈央、藤原啓治、矢島晶子、市村正親。
柏葉幸子といえば『千と千尋の神隠し』の元ネタ
『霧のむこうのふしぎな町』の作者としても知られているが、意外にも本作が初映像化(アニメ化)作品のようだ。
小説はパラパラとめくっただけだが、お話はかなりというか全然違うらしい。
綺麗な絵、綺麗な音楽、しかしお話は淡々と進む。
この世界は色々と危機に瀕してるようだが、どうも住民たちにはそれほど切羽詰まった感がない。
ヒポクラテスだけが焦って、気持ちが空回りしてるだけのように見える。

アカネは何を言われても「自分には無理」と答えるし、順応性は高く何にでも首を突っ込みたがるチィちゃんも基本は楽天家だ。
異世界の冒険譚としてもワクワク感がまるでなし。
まあ胡散臭い人にいきなり「あなたは”緑の風の女神”だ」「あなただけがこの世界を救える」と言われたって、はい、わかりました!
…とはならないだろうに。
そして何やら曰くありげな悪役(?)も、途中でその正体が読めるとはいえ何をしたいのかがよくわからない。
行動や目的に矛盾が生じるというか、結局怖くて逃げだしただけなの?
なのでクライマックスがかなり唐突に感じられた。
本来はここでハラハラドキドキが待ち構えているべきなんだけれども、そのお膳立てが下手というかちっとも盛り上がらない。
まあハッピーエンドだったのだろうけど、アカネたちは結局何をしたの?
アカネの誕生日の前日ということに意味はあるの?
てっきりアカネのお母さん(ミドリ)が鍵を握ってる(先代の女神さまとか)のかと思いきや、単に謎めいてるだけの存在だったし。
いや、やっぱりミドリさんが先代の女神ってことでいいんだよね?
そして映画が盛り上がらないもう一つの理由。
正直言ってプロとアマチュアの技量の差がはっきり出てしまうキャスティングは如何なものかと…。