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『VAMP』(2019)

父親から性的虐待を受け続けている女子高生の美以那は、自暴自棄になって見知らぬ男を誘って殺そうとするが、力及ばず逆にレイプされそうになっていたところを謎の美女に助けられる。
翌日学校から指定されたカウンセリング先へ向かった美以那を出迎えたのは、あの謎の女性だった。
苓と名乗った彼女は自らを”ヘマトフィリア(血液耽溺者)”と称し、彼女が許せないと感じる極悪非道な男だけを殺し、その血を啜って生きてきたのだ。苓は美以那を導き、そして美以那は苓に惹かれてゆく。
そんな折、無差別に人が襲われ生き血が吸われるという事件が連続して発生していた。警察は過去にも類似の事件があったことから、苓に疑いの目を向ける。

『VAMP』(2019)_e0033570_23120874.jpg<夏のホラー秘宝まつり2019>上映作品の一本。

原作・脚本:小中千昭、監督:小中和哉、の小中兄弟作品で、出演は中丸シオン、高橋真悠、田中真琴、渡邊翔、俊藤光利、加藤厚成、松沢蓮、早坂季花、北岡龍貴、木之元亮、石田信之、大浦龍宇一、堀内正美と円谷プロ所縁の顔が並んでいる。
なお「ミラーマン」鏡京太郎役で知られる石田信之は、惜しくも本作が遺作となった。

タイトルの「VAMP」は勿論ヴァンパイア(吸血鬼)のことだが、物語序盤でヒロインがこれを否定。定期的に血を欲する身体ではあるものの、自分は吸血鬼ではないと説明する。
だが中盤から苓の出生に絡む”秘密”が明らかになると、一転してヴァンパイア物へと変貌。血しぶきは飛び交うもののさほどの残酷描写はなく、特に終盤は更にアクション物と化すのでホラーが苦手な自分でも大丈夫だった。

またヴァンパイア物といえば、直接間接問わずエロティシズムを醸し出している作品が少なくないが、むしろ本作の売りはこちらにある。ヘアこそ見えないものの、中丸シオンと高橋真悠の全裸の絡みは美しく、見ていて陶酔してしまう。

ただ物語上、二人が肉体的に結びつくシーンが必要だったのかはやや疑問。幼い頃に母親を亡くし、以来父親から虐待を受け続けた少女が男性恐怖症になり、結果同性の庇護者に安らぎを見出すに至った、という解釈で良いのだろうか。

ラストは少女から大人への脱皮、そして自立を描いているのだろうと思うが、大きな世界に放り出すだけでなくもう少しだけ”希望”を持たせられる展開があればなあとは感じた。
また父親の問題がまだ解決していないだけに、まだ彼女の行く手は険しい筈だ。



by odin2099 | 2019-08-24 23:13 |  映画感想<ハ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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