
株取引の世界はミリ秒単位で莫大な損得が発生する世界。ヴィンセントと従兄弟のアントンはカンザス州にあるデータセンターと、ニューヨーク証券取引所のサーバーまで直線に光ファイバーケーブルを敷くことを思いつく。17ミリ秒かかっている現在のアクセス時間を16ミリ秒に縮め、最短のアクセスを売りにすることで莫大な利益が見込めるのだ。
ヴィンセントの持ち前のセールストーク(「タイムマシンで未来へ行き、当選番号を知ってから宝くじを買うようなもの」)で出資者を見つけ、会社を辞めた二人は工事のプロを雇い、土地の所有者からの買収も着々と進め、計画は軌道に乗ったと思われた。だが突然会社を辞めたことに怒り心頭の元上司エヴァは、二人の計画を知るとそれを上回るべく独自のプロジェクトを進めると共に、二人の計画の邪魔を始める。
そんな時、ヴィンセントが病に倒れる。
……だと思っていたのだが、どうやら違うようで映画にマイケル・ルイスの名前はクレジットされていない。
また一部で「実話の映画化」と宣伝されていたようだが、直線に掘削してケーブルを埋め込むプロジェクト自体は存在したものの、登場人物もドラマもフィクションのよう。
ルイスの著書も”参考書”程度の扱いなのだろう(盗作問題を避けるために映画化権は押さえているのかもしれないが)。
予告などを見る限りでは面白そうだなと思ったのだが、実際はかなり期待外れ。
ヴィンセントとアントン、あるいはライバルのエヴァが取り組むプロジェクトが情熱を傾けるだけの魅力的なものに思えないし、その進捗状態や決着のつけ方も不明確。
ヴィンセントが癌に冒される件にしても、これが実話に基づいているなら納得もしようが如何にも取って付けたように思える。
これが実話ベースならばエンドロールなどでこのプロジェクト全体の顛末やら、登場人物たちのその後をテロップなどで明示し終わるところだが、フィクションなのでそれもなし。端からフィクションにするなら、もっと映画的にまとめるということも出来たと思うのだが(決して映画的に”盛れ”という意味ではない)。
ジェシー・アイゼンバーグ、アレクサンダー・スカルスガルド、サルマ・ハエックといった演技陣が魅力的なので最後まで見ていられるが、脚本と演出にもっと工夫が欲しかったところだ。