親の遺産で何不自由なく暮らしている南田収一は妻のみや子を溺愛しているが、どうやら最近妻が浮気しているらしいことに気付く。
南田から悩みを打ち明けられた夫妻かかりつけの歯科医である琴浦は、明智探偵事務所にみや子の素行調査を依頼するのだが、実はみや子の不倫相手は琴浦だった。
明智小五郎に代わって担当することになった明智の妻の文代は、調査を進めるうちに南田夫妻と琴浦の関係に違和感を覚え始める。

江戸川乱歩の
「妻に失恋した男」を原作にした
<江戸川乱歩エロティックシリーズ>の第一弾だが、「失恋殺人」というタイトルは少々的外れ。
「失恋」した人が「殺人」を犯すわけではなくむしろ被害者だからで、何故原題通りではいけなかったのだろうか。
出演は宮地真緒、柳憂怜、大浦龍宇一、山田キヌヲ、草野康太、星野真里、白州本樹、監督・脚本は窪田将治。
宮地真緒の”体当たり演技”がセールスポイント。
物語はよくある三角関係、いや歯科医に想いを寄せているであろう歯科医助手の女性を含めれば四人の男女の愛憎劇で、意外な展開、意外な結末というものはない。
気になって原作も読んでみたものの、ありふれた通俗的な小説だなあと感じるのみ。
捜査を担当した刑事の一人称で綴られる短編というのがちょっと目を引く程度だ。
原作と映画の違いといえば、まず原作には明智小五郎とその妻・文代が登場しないこと。
物語は前述の通り、刑事の一人称で語られる。
次にみや子と琴浦の関係に気付き、琴浦を強請ろうとする助手が原作には登場しないこと。
そして南田の殺害は原作では二人の共謀だが、映画では琴浦の単独での犯行であること。
更に原作では、南田の生前には二人は一線を越えていなかったということだろうか。
逆に言うと映画はこの最後の部分を大々的にアレンジし、かつ最大の売りにしているのだ。
宮地真緒は開巻すぐに全裸のベッドシーンを演じ、その後も何回も濃厚な絡みを見せてくれる。
彼女のツンと張った形の良いおっぱいは、確かに鑑賞料金に見合ったものと納得する人も少なくないだろう(ちなみに下半身の露出は殆どないので、宣伝文句にあるような”一糸まとわぬ大胆演技”とは言い切れない)。
ただ「脱ぎ損」とまでは言わないが、映画は実に凡庸な仕上がり。
草野康太扮する明智小五郎は終始頼りなく全くといってよいほど活躍しないし、星野真里の明智文代はいわゆるドジっ娘属性に設定され、一貫してドタバタワーワーしているために、いつ周囲に正体がバレるんじゃないかと違う意味でハラハラさせられるし、最後は今まさに犯人が事件を隠ぺいしようとしてる現場に明智夫妻が乗り込んでしまうため、推理劇の要素も全くないのが残念だ。
結局のところ推理小説を映画化する、ミステリー映画を製作する、ということではなく、あくまで女優の裸をメインにした映画を作ることが目的なのだろうから、それ以上言っても詮無いことなのだろうが。
【ひとこと】
山田キヌヲが演じた歯科医助手も、物語をかき回してくれる存在だろうと期待していたが、途中退場してしまうので勿体ない。