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『病院坂の首縊りの家』(1979)

『病院坂の首縊りの家』(1979)_e0033570_16480826.jpgしばらく旅に出るため写真館を訪れパスポートの写真を撮ろうとした金田一耕助は、そこの主人である徳兵衛から自分の身に危険が迫っているので調査をして欲しいとの依頼を受ける。
同じ日その写真館へ若い女性が現れ、結婚写真を撮って欲しいので夜にある場所へ来て欲しいと告げる。
夜になると男がやってきたが、若主人の直吉が案内されたのは”病院坂”と呼ばれる場所にある、廃屋だと思われていた洋館だった。そこで直吉はその男と昼間訪ねて来た女性との婚礼写真を撮影した。
後日直吉らは写真館を訪ねて来た金田一と共に件の洋館へと写真を届けようと出掛けるが、そこには例の男の生首が吊り下げられていた。

犬神家の一族」(この作品のみ所謂”角川映画”)、「悪魔の手毬唄」、「獄門島」、「女王蜂」に続く原作:横溝正史、監督:市川崑、主演:石坂浩二(ビリング上はトメ)トリオによる<金田一耕助シリーズ>の5作目にして最終作。冒頭と最後には横溝正史本人が出演している。原作でもこれが金田一耕助最後の事件とのこと。

今起こっている事件が過去に起った事件と密接に絡み合い、それが複雑な人間関係に起因しているというストーリーは、おそらく一度見ただけではすんなりと入っては行かないのではないか。
その難解さが映画自体の印象も薄め、今回見るのはおそらく二度目の筈だがこれまでのシリーズ作品と違って全くと言って良いほど記憶に残っていなかった。
前四作に比べるとタイトル・バックからして雰囲気がちょいと違い、物語の展開が淡々としていて盛り上がりに欠ける嫌いがある。演出は説明不足、台詞は説明過多なのは相変らずだが、シリーズの打ち止めとしてはこんなものかな。出来としてはやはり一番劣る。
と以前「しねま宝島」に書いているのだが、その通り。

シリーズお馴染みの顔触れやフレッシュな配役も、表面上を塗りたくって取り繕っただけのように見えてしまう。
草刈正雄のキャラクターなどかなり目新しく、使い方によってはもっと面白くなったように思えるのだが…。
結局は殆ど誰一人救えていないラストもモヤモヤが残ってしまう。

そうはいっても約2年半に5本とは、かなりのハイペースでハイクオリティな作品が作られていたのは驚嘆に値する。
そして奇跡的にシリーズは復活を遂げるのだが、それはまた別の話だ。



by odin2099 | 2019-11-04 16:54 |  映画感想<ハ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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