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『八つ墓村』(1996)

『八つ墓村』(1996)_e0033570_07264716.jpg寺田辰弥は自分を探している者がいるとの報せを受け諏訪法律事務所を訪ね、そこで自身が八つ墓村の庄屋・田治見家の跡取り息子であると知らされる。だがその直後に辰弥を迎えに来た母方の祖父・井川丑松は毒殺され、辰弥の元にも八つ墓村へ来てはならぬとの警告状が届く。
亡き母の故郷を見たいとの思いから辰弥は、田治見家の使者である森美也子に案内され、八つ墓村の田治見家を訪ね、一族を仕切る大伯母である小竹と小梅姉妹や異母兄姉の久弥と春代、従兄妹の里村慎太郎、典子らに引き合わされる。そして美也子から八つ墓村に伝わる恐ろしい呪いの話を聞かされる。
翌朝、今度は久弥が死体となって発見されるが、そこへ諏訪弁護士から依頼を受けたという金田一耕助という探偵がふらりと現れた。

市川崑監督が17年ぶりに手掛ける<金田一耕助シリーズ>で、監督は当然のように石坂浩二を主演に考えていたようだが、製作サイドからは豊川悦司を勧められたとのこと。
しかしこの映画、封切りで見に行ってるはずなのに、トヨエツが「しまったーっ!」と大声を上げるシーンしか記憶にない。
はてさて。

これまでの<金田一シリーズ>では、事件が起きてやってきた胡散臭い男が、やがて周囲の人物と打ち解け、風采の上がらない見かけとは裏腹に鋭い推理力を発揮し、最後に犯人を名指しする(解決する、とは言ってない)。
そして最後には皆を穏やかな心持にして去ってゆく、というパターンだったのだが、それをそっくりトヨエツに当てはめようとしたのがそもそもの失敗だったのだろう。

トヨエツの金田一は最後まで胡散臭い奴で、石坂=金田一が持っていた犯人に対する温情は持ち合わせていないようだ。
犯人が自死に及ぶことを承知で見逃すのではなく、単にウッカリで自決させてしまうのだ。

その犯人にしても、そもそもの物語上の立ち位置がわかりづらい。
動機についてはクライマックスで自らの口から語るものの、余所者にしか思えない人物が何故物語の中心に座っているのか、その説明がないからだ。
そしてシリーズ伝統とも言える、配役を見ただけでわかってしまう犯人、というのもやや興ざめ。

おそらくこの作品がヒットしたら再び<金田一シリーズ>を再開する腹積もりもあったのだろうが、残念ながら実現せず。
またお馴染みの加藤武が胃薬を吹きこぼし、「よしっ、わかった!」を披露してくれるものの、どうやらこの作品はシリーズの一本はおろか、番外編としても数えられていないようだ。
シリーズの真の後継者はこの作品の10年後に作られた「犬神家の一族」のリメイクということになるようで、そう考えるとますますこの作品が不憫に思えてくる。



by odin2099 | 2019-11-11 07:34 |  映画感想<ヤ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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