**** ネタバレ注意! ****

「スター・ウォーズ」のエピソード9にして、「
フォースの覚醒」「
最後のジェダイ」に続く三部作の完結編、そして<スカイウォーカー・サーガ>九部作の完結編とのことです。
もっとも製作サイドはスピンオフとなるドラマシリーズだけでなく、数年後には新作映画を作ることも発表していますので、「スター・ウォーズ」全体の完結編ではありません。
「
アベンジャーズ/エンドゲーム」も”完結編”として宣伝していましたが、あちらもすぐに”続き”の物語が公開されていますし、来年からは新章もスタートすることが告知されております。
こういった流れは何か詐欺のような気がしないでもないですが、それでもどちらも長い物語に一区切りがついたわけですから、製作に携わった皆さんには、ひとまず「お疲れさま」と声をかけたい気分です。
さてこの「スカイウォーカーの夜明け」、何の説明もなくレジスタンスもファースト・オーダーも体勢を立て直し、再び激突しているところから始まります。
「最後のジェダイ」のラストでは双方ともかなりボロボロの状態だったように記憶していますが、時間経過は一年らしい割に事態は目まぐるしく変化しています。
しかもいきなりかつての皇帝パルパティーンは生きていた!と説明されても困ります。
アナキンとルーク父子の苦労も水の泡と消えました。
アナキンは無駄死に?あの森のクマさんと喜びを分かち合った大団円は、一体何だったのでしょう?
もっともパルパティーン復活の報を聞いても、皆あまり驚いた様子を見せません。ずーっと「どっかで生きてんじゃねえの」と思われていたのでしょうか。
そのパルパティーン復活のあおりを喰らって、完全に存在意義を失ったのが最高指導者スノーク。
「フォースの覚醒」で思わせぶりに登場し、「最後のジェダイ」であっけなく退場したものの、まだ某かの役割があるのだろう、これで終わりじゃないだろうと深読みをしていましたが、何のことはないパルパティーンの傀儡、単なる操り人形だったことが判明します。
本命が出てくるまでの”繋ぎ”だったということですが、それなら最初っからパルパティーンを出しておけば済んだんじゃないの、と考えたのは自分だけではないでしょうね。
そしてあろうことか、あのレイが実はパルパティーンの孫娘だった…!
「フォースの覚醒」ではスカイウォーカーの血を引くものか、あるいはアナキンのように処女懐胎、じゃなくフォースによって誕生したのかと思わせておいて、「最後のジェダイ」では実はレイの両親は名もなき市井の人々、金の為に娘を売ったろくでなしなんだと説明し、特別な血筋ではない、”誰でもないレイ”という立場を強調して見せておいてのどんでん返し。なんだ、結局は大物の血族かよ!
いや、確かにレイがパルパティーンの血縁というのは予想の範囲ではあり、そう考えればまとめやすいのはわかりますが、じゃあ「最後のジェダイ」でのルークや、カイロ・レン、スノークらとのあのやり取りはなんだったんでしょうねえ。
ちなみにレイのお父さんがパルパティーンの息子ということらしいですが、いつ頃生まれたのかとか、フォースを操れたのかとか、そういうことは一切明らかにされませんでした。
父のように悪に染まるでもなく、ひたすら(奥さんも一緒に)我が子レイを庇って死んでいったようです。
年齢的にはパルパティーンのひ孫でも良い気がしますけどね、レイ。
レイのこの出自、カイロ・レンは知っていたようで(じゃあ「最後のジェダイ」では嘘ついてたのかいな)、共にパルパティーンを倒して銀河に君臨しようぞ、とレイを再三口説きにかかります。
かつてアナキンがパドメに、ダース・ベイダーがルークにそれぞれ同じ提案を持ちかけますが、相手側からOKの返事を貰ったためしがありません。
またルークもレイアも、レイがパルパティーンの孫娘だということは知ってたってことになってますが、「最後のジェダイ」の時のルークは明らかに知りませんよね。レイアも然りです。
カイロ・レンとレイは何度か対峙しますが、レイアの呼びかけに応えた一瞬の隙を突いたレイのライトセーバーにその身を貫かれます。ここで命を落としたかに思えたカイロ・レンですが、すぐさまレイはフォースを送ることでその命を救います。
カイロ・レンは己が裡に生き続ける父ハン・ソロと向き合うことで、遂にダークサイドからライトサイドへの帰還を果たします。両親の”愛”(とレイの献身)によってカイロ・レンは死に、新たにベン・ソロとして生き返ったのです。
クライマックスはパルパティーンと戦うレイとベン・ソロ。
圧倒的なパワーの前にレイもベンも力尽きてしまいますが、シスの歴史を背負ったパルパティーンに対し、レイはジェダイの歴史を背負って立ち上がります。
レイに呼びかけるのはルーク、オビ=ワン・ケノービ、アナキン・スカイウォーカー、クワイ=ガン・ジン、ヨーダ、メイス・ウィンドゥ、アソーカ・タノ、エズラ・ブリッジャー、ケイナン・ジャラス、ルミナーラ・アンドゥリ、アイラ・セキュラ、アディ・ガリア…って、この名前を見てすぐに全部のキャラがわかる人はよほど熱心なファンでしょうね。
わかる人だけわかれば良いという一種のファンサービスなのででしょうが、個人的にはオビ=ワンとアナキン、ヨーダあたりは姿も見せて欲しかったですけれど。
何とかパルパティーンを倒したレイですが、その代償として命を落としてしまいます。そこへ駆け付けたのは瀕死のベン。彼はフォースを送ることで自らの命と引き換えにレイを救います。
そしてレイの復活を見届け、レイア共々フォースと一体に。このトリロジー、表面的にはレイが主人公ですが、実はベンのお話でもあったのだなあと改めて感じました。
また台詞なしで全ての感情を表現してみせた、アダム・ドライバーの演技力に負うところ大です。
ラストシーン、レイはタトゥイーンに残されたルークの住んでいた家を訪れ、そこにルークとレイアの形見となったライトセーバーを埋めるのですが、そこへ通りがかった老婦人に名前を尋ねられ「レイ」とだけ答えます(前半で名前を訪ねられた彼女が「ただのレイで、ファミリーネームはない」と答えるシーンがあり、それと対になっています。そしてその後で自分が「レイ・パルパティーン」だと知らされるのです)。
重ねて老婦人からファミリーネームを聞かれた時、フォースと一体となったルークとレイアが見守っていることに気付き、「レイ・スカイウォーカー」、スカイウォーカーの継承者だと答えるのでした。
そしてタトゥイーンの二重太陽を見つめるレイとBB-8の姿を捉えて幕。これが文字通りの「スカイウォーカーの夜明け」というわけです。

前作、前々作で提示された謎に関しては、ほぼ回答が与えられます。
中にはフィンの出自のように触れられそうで全く触れられなかったものもありますが(「フォースの覚醒」の頃はランドの息子説がありましたが、むしろ今回登場した元トゥルーパーの女性にランドの娘である可能性がありそうです)、こぼれ落ちたものは少なくないものの辛うじて大風呂敷を畳んだな、という印象は残ります。
ただ「フォースの覚醒」と「最後のジェダイ」では明らかにベクトルが違っているのに、それを再び元に戻したことでシリーズとしての整合性はかなり失われてしまいました。
それに過去の6作も含めての完結編としては些か荷が勝ちすぎた嫌いもあります。
せっかく決着が付いていた問題をわざわざ掘り起こしてくる必要はありませんし、全てにケリを付けるには時間が足りません。
この三部作は先を決めずに各々の監督の手に委ねるというスタンスだったようですが、言ってみれば行き当たりばったりで作ってきた弊害が出て来たと言えそうです。
監督の手に委ねた割に、この「スカイウォーカーの夜明け」では監督の交代劇があったりで、その責任がディズニーにあるのかルーカスフィルムにあるのかはわかりませんが、しっかりとした舵取り役が不在なのは今後の作品作りに際しても大きな不安要素と言えるでしょう。
結局前作「最後のジェダイ」は不要、とまでは言いませんが、壮大な遠回りになってしまいました。
今回はレイ、ポー・ダメロン、フィンが3人で行動するシーンも増え、これは原点に還るという思惑もあったようですが、これまでの作品で三人が一堂に会するシーンがないため、このトリオの良さが全然活きてこないのもマイナスです。もっと事前に伏線を張ってくれないと…。
予告編で大きくフィーチャーされていたC-3POのメモリー消去にしたって、結局はR2-D2のバックアップによって復元されるのですからいらない要素ですね。
そして相変わらず旧作品からの引用のオンパレード。
ルークがXウィングを引き上げる場面は「帝国の逆襲」のオマージュ(わざわざ「ヨーダのテーマ」も流しますが、本作にヨーダは姿を見せません)だし、「ファントム・メナス」のポッドレースと「ジェダイの帰還」のスピーダー・チェイスを彷彿とさせる場面も出てきますし、枚挙に暇がありません。
やはりこの三部作は、懐古趣味に憑りつかれた”公式の”二次創作だと結論付けざるを得ませんでした。
さて、完結編ということでキャストにも懐かしい顔がチラホラ。
ルークはやっとマスター・スカイウォーカーらしい姿を見せてくれますし、ハン・ソロのハリソン・ファオードはノンクレジットのカメオ出演。実際のところストーリー展開などにさほどの意外性は感じられなかったので、本作最大のサプライズと言っても良さそうです。ジェダイではないハンがルークのようにフォース・ゴーストとして登場することは考えられませんですから。
ランドの再登場は本当に顔見せで役割は大きくありませんし、せっかくウェッジが出てくるならもっとランドやナイン・ナンあたりと絡ませて欲しかったものですが、これは贅沢でしょうか。
そしてレイア。
撮影開始前のキャリー・フィッシャーの急逝により、彼女の出演は不可能になってしまいました。
当初は”最後のジェダイ”として相応の活躍の場が与えられていたということですが、代役やCGでの登場は早々に否定されどうなることかと思っていましたが、「フォースの覚醒」の未使用フッテージを利用しての出番となりました。
驚くべきことに、これが全く自然に見えます。本作の為に録りなおされた台詞がないというのが信じられません。CG加工もなし、というのは信じられませんし(他の役者との絡みや、背景との調整などで修正はされていると思われます)、回想シーンでルークと共に修行に励む若きレイアの姿や死に至る場面では代役も起用されているはずですが、知らないで見れば気付かないでしょう。もっとも彼女の出番そのものは、おそらくルークやハンに割り振られているのだろうと思いますが。
金曜の初日に吹替版、日曜日に字幕版と2回見てきましたが、今回はひとまずこれにて。
まだ自分の中でこの作品を受け止め切れていないので、3回目、4回目と見る機会があれば、改めて追記します。