
D坂の安アパートに住む世間に倦んだ青年・郷田は、ある日偶然に古書店の若き夫人・悦子と蕎麦屋の主人・鈴木との不倫現場を目撃、彼女に強く惹かれる。
後日、鈴木が謎の自殺を遂げる。
第一発見者は、鈴木が常連として通っていた件の古書店の主人である花崎。
だが明智小五郎は他殺の可能性を考え、明智の妻の文代は調査を開始する。
その頃郷田は古書店を訪れ、悦子に近づいていた。
江戸川乱歩没後50周年記念作品で、窪田将治が
「失恋殺人」に続いて脚本・監督を務める。
明智小五郎役は前作同様草野康太だが、文代は大谷英子に、浪越警部は近藤芳正に交代。
「週刊ポスト」の「謎の美女シリーズ」というグラビアで人気を博した祥子が、文字通りの体当たりで映画初主演。
郷田に河合龍之介、蕎麦屋の主人に仁科貴、悦子の夫である花崎に木下ほうかという配役。
<劇場公開版>よりも過激な<アンリミテッド版>ということだが、<公開版>を見ていないのでどの程度の違いがあるのかは不明。
上映時間は変わらないようだが。
そして原作は未読で、以前同名の
実相寺昭雄監督版を見たことがある程度だが、そちらもこちら同様原作とはまるでかけ離れた作品らしい。
江戸川乱歩作品というものは、かくも作り手の創造力を過剰に掻き立ててしまうものなのだろうか。
明智小五郎は前作同様前面に出ず、捜査はもっぱら文代が担当。
ただ映画の主眼は事件の真相を追うことよりも、悦子と郷田、花崎の異様な関係を描くことに置かれているのでミステリー物の妙味は味わえない。
映画そのものも祥子のオールヌードを売りにしているのだから間違いではないのだが、その割に画面が暗く(淫靡な雰囲気を醸し出そうとしたのかもしれないが)、また全体的に台詞が聞き取りづらいなど欠点が目立つ。
やはりそれなりに芝居の出来る役者陣を揃えないと、せっかくの素材、題材も残念ながら実を結ばない。