
世界的な大ベストセラー小説「デダリュス」完結編。
これを各国で同時に出版するために、9カ国の翻訳担当者が人里離れた洋館の地下室に集められた。
原稿の違法な流出を避けるため、彼らは外部との接触を禁じられ完全な監視体制の元で作業は進められる。
だがある日、冒頭の10ページがネットに流出し、出版社の社長宛に現金を要求するメッセージが届く。そして要求を受け入れなければ、更に次の100ページを公開すると予告する。
原稿を目にしたのは作者のオスカル・ブラック、社長のアングストローム、そして9人の翻訳家だけのはず。アングストロームは9人の中に犯人がいると見て徹底した調査を行い、精神的にも肉体的にも追い詰めていく。
だが次の100ページも公開され、アングストロームの行動もエスカレート。そんな中で翻訳家の一人が自死を遂げてしまう。
ダン・ブラウンの「天使と悪魔」「ダ・ヴィンチ・コード」「ロスト・シンボル」に続く<ラングドン・シリーズ>4作目の「インフェルノ」の翻訳出版の際、実際に各国の翻訳家たちが監禁状態で作業をしていたという”事件”を元に構想されたミステリー・ドラマ。
出演はランベール・ウィルソン、オルガ・キュレンコ、リッカルド・スカマルチョ、シセ・バベット・クヌッセン、エドゥアルド・ノリエガ、アレックス・ロウザー、アンナ・マリア・シュトルム、フレデリック・チョー、マリア・レイテ、マノリス・マヴロマタキス、サラ・ジロドー、パトリック・ボーショー。
監督はレジス・ロワンサル、脚本はレジス・ロワンサル、ダニエル・プレスリー、ロマン・コンパン。
「誰もが騙される」式の宣伝がなされていたので、「騙されるもんか」と身構えて見てしまったのだが、それ自体がミスリードを誘う仕掛けになっていたとは。
誰が犯人でどんな方法を使って流出させたかは勿論気にはなるのだが、この辺りは中盤で比較的あっさりと明らかにされるし、その犯人も大方の人が「この人じゃないかな」と目星をつけていたであろう人物で、実はこの作品の肝はそこにはない。
何故この人物が犯行に及んだのかという動機と、この犯罪によって何がもたらされるかという目的、それが少しずつ明らかになっていく後半部分は二転三転する怒涛の展開で、なるほど「騙される」とは犯人探しではなく、事件そのものが起きた理由の方なのか。
犯人が取った手段や結末に納得しているわけではないし、感情移入のしづらい人物ばかり出てくるので見終った後にモヤモヤが残ってしまうが、それでも一見の価値ありの良く練られたサスペンスである。