第二次大戦末期、沖縄へ向けて出港する戦艦大和を中心とする日本艦隊に、密かに随行する最新鋭の小型潜水艦があった。
まだ名前すらない試作艦を乗組員たちは「ゼロ」と呼んだ。
敗色濃厚の戦いの中、艦長の森大尉は乗組員を全員降ろすと敵空母へ体当たり攻撃を仕掛ける。
だがその瞬間、眼前に不思議な空間が広がった。
気が付くと森大尉を乗せたゼロは、時空を飛び越え西暦2100年の月面都市にいた。
都市の生き残りによって助け出された森大尉は、驚くべきことを聞かされる。
今の地球は謎の宇宙人に支配されているのだという。
しかも彼らは森大尉の子孫だった。
事情を知った森大尉は彼らと協力し、ゼロを改造し地球奪還へと出撃する。
今度は戦艦大和そのものではなく、それに随行する架空の特殊潜水艦を主役にしたSF小説である。
こっちも『宇宙戦艦ヤマト』の続編ではないことを知りつつ、何となく”関連作”ということで飛びついた。
宇宙潜航艇といいつつ、ゼロは月から地球へ旅するだけだし(途中で戦闘は行うが)、あとは潜水艦だけに大掛りな武装もないため地球上でもさして活躍はしない。
もっぱら主人公である森大尉が超人的な活躍を見せるだけだ。
侵略者の正体やその目的が、不採用となった『宇宙戦艦ヤマト』の初期プロットに若干似ているような気がするのが気になるが、コンパクトにまとまった小品。
SFというより架空戦記物のテイストで映像化してみたら案外面白いのではないだろうか。
石津嵐には他にも『宇宙海賊船シャーク』をはじめとする<キャプテンシャーク>シリーズ三部作がある。
確か1巻だけ読んで投げ出しちゃったのが今思うと勿体ない。
当時のソノラマ文庫には他にも石ノ森章太郎・原案の『宇宙巨艦フリーダム』とか気になる作品があったなあ(読んでない)。
他社だけど若桜木虔の
『宇宙戦艦ムサシ』とか、あの頃の作品、どこかで復刻してくれないものかしらん?
【ひとりごと】
巻末に当時のソノラマ文庫のラインナップが1~25まで並んでいたが(ちなみに1が『宇宙戦艦ヤマト』で、この『宇宙潜航艇ゼロ』は21)、懐かしかった。
22『マーメイド戦士』(豊田有恒)と25『あの子は委員長』(神保史郎)は読んだっけ。