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『判決はCMのあとで/ストロベリー・マーキュリー殺人事件』 青柳碧人

裁判がTVのバラエティ番組になっていて、そこから誕生した裁判アイドルグループ”CSB法廷8”も大人気、という架空の世界。
主人公は人材派遣会社で働くサラリーマンの青年。恋人は裁判番組大好きの法学部の女子大生だけど、彼は裁判やら法律やらには全く興味がない。
そんな彼が、人気のビジュアル系バンドが絡む殺人事件の公開裁判の裁判員に選ばれてしまう。
ひょんなことから裁ドルグループのリーダーと良い雰囲気になったりするが、嫌々ながらも国民の義務を果たしていくうちに、審議の進め方、番組の構成等々に違和感を覚えてきて……。

『判決はCMのあとで/ストロベリー・マーキュリー殺人事件』 青柳碧人_e0033570_21265185.jpgラブコメの要素が強いものの、展開はオーソドックスな陪審員モノ。
陪審員たちが提示された証拠や証言を前に無罪か有罪か揺れ、”市民感覚”で意外な盲点を衝いたり、逆に結論ありきで進めようとしたり、その話し合いの中で新たな意見が出されたり、と喧々諤々。
実は判決は出るものの事件の真相は決して明らかにはならない点や、主人公がモテモテすぎて都合よくお話が流れすぎる部分が引っ掛かったりもするのだが、少しだけ、ほんの少しだけだけど裁判が身近に感じられた点も含めて楽しめた。

弁護人に検察官、TV局のプロデューサーに法廷アイドル、と濃いキャラクターが沢山出てきているので、シリーズ化しない手はないと思うのだが、今のところ続編はなさそう。
それにしても「48」ならぬ「法廷8」なんてアイドルグループ、出来るワケないよなあ…と最初は笑っていたけれど(ちなみに「CSB」は「地方裁判所」の略)、傍聴がブームになったり、取り調べの可視化が進んでる昨今、将来的に裁判そのものが娯楽化する可能性はゼロではない気が読み進めるうちに段々してきた。

題名から「謎解きはディナーのあとで」をちょっと連想してしまったが、ご丁寧に文庫版の解説は作者の東川篤哉
「謎解きは~」のヒロイン宝生麗子との対談という形で、「似てるのは題名だけで全くの別モノ。便乗商品ではない」とフォローを入れているのが可笑しい。


by odin2099 | 2020-02-05 21:27 | | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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