アフリカから持ち込まれた、エボラ・ウイルスを遥かに凌ぐ感染力と致死性を持つ未知のウイルスに対処する人々を描いたパニック映画。
四半世紀ぶりに見直したが、十二分に今日的なテーマで飽きさせない。
逸早く危険に気付いた主人公が声を上げるが周囲には理解されず、その間に一人また一人と犠牲者が増えてゆく。
ようやく組織立った行動が取られるようになったものの時すでに遅し、被害は広まる一方だ。
またこの期に及んで事なかれ主義、あるいは何らかの理由から真相を隠したいという政府や軍などの圧力により、主人公にも危険が及ぶ、という展開は正にパニック映画の王道。
今回はかつて軍はこのウイルスの存在を知りながらも隠蔽し、しかもそれを細菌兵器に転用していたという、ポリティカル・サスペンス物風の味付けも施されている。
キャストにはダスティン・ホフマン、レネ・ルッソ、モーガン・フリーマン、ケヴィン・スペイシー、キューバ・グッディング・Jr、ドナルド・サザーランドと渋いところが並ぶが、アクション物やディザスター物には縁がなさそうなダスティン・ホフマンが主演というのが効いている。
監督はウォルフガング・ペーターゼン。
元々プロデューサーのアーノルド・コペンソンはエボラ・ウイルスを題材にしたリチャード・プレストンのノンフィクション『ホット・ゾーン』の映画化を進めていたが、そちらが頓挫してしまったためにフィクションとしてこの作品を作ったとのこと。
そして映画公開中にザイールでエボラ出血熱が猛威を奮ったことも話題になったっけ。
冒頭に「人類の優位を脅かす最大の敵はウイルスである」というノーベル賞受賞者であるレーダーバーグ博士の言葉が出るが、今は正に実感。
こういう作品こそ今テレビなどで流すべきではないかと思うが、もし放送したら、ふざけるな、いたずらに恐怖心を助長させるだけだと批判されてしまうのだろうな。